今日もドケチで優しい小鳥遊さん
白野 ケイ
第1話 ドケチな小鳥遊さん
ゴーンゴーンとお昼を告げるチャイムが鳴り響いた。
ご飯、食べようかな。
「香奈!仕事は一段落した?ご飯行こ、ご飯!」
勢いよく話しかけてきたのは私の同期、小畑楓。元気が取り柄の女の子。
「うん、そうだね。ご飯行こ!」
「じゃあさ、最近できたフレンチ行かない?」
「あ、私お弁当だから。」
外食はめったにしない。だって高いもの!
「いっつもお弁当だね香奈は。じゃ、食堂行こ。」
色んなお店が連なるビルの食堂。OLにとっては心地よい空間。
でも、やっぱり高い。
「じゃ、私買ってくるから。香奈先食べてて。」
私も飲み物を調達しよう。家で洗ってきたペットボトルを用意し、無料のウォーターサーバーへ向かった。
タダで美味しい水が飲めるなんて、なんて幸せなんだろう。
席に戻ると、もう楓はオムライスを持って帰ってきていた。
「まーた水筒も使わないでお水取りに行ってたの。」
呆れた顔をしている下を見ると、なんと、新品のペットボトルのお水!
「か、楓、そのお水買ったの?」
「え、うん、そうだけどなんで?」
「だ、だってウォーターサーバーあるじゃない!」
信じられない。すぐ近くにタダ水があるのに自販機で買うなんて!
「あぁ、今日水筒忘れちゃったし。」
そっか、一般的な24歳ってお水にお金払うものなのね..
気を取り直して、ご飯食べよう。
パカッとお弁当箱を開く。
「え、ちょっと香奈!なにそれ!」
「なにって..」
今日の献立!
白米の代わりに割引だった五穀米!その上には家で育てている豆苗!醤油をたらり。おかずは、お餅!醬油をたらり。
「え、五穀米に豆苗と、餅?やばくない?」
え、やばいのかな私。全部美味しいのに。
「お餅は、おばあちゃんが送ってくれたからいっぱいあるんだよね。お腹にたまるし。」
「だからってお弁当に..」
「一口食べる?」
「えっ、う、うん。」
にょーんと伸ばした真っ白いお餅。
小さく切り、楓の口へ運ぶ。
「どう?」
「うんまぁ!これ、アリだわ!」
これは、ドケチで優しい小鳥遊香奈(24)の何もないタダの日常の物語。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます