第117話 ルナと魔法練習【アリソン視点】
さて、ルナとのテイミングが完了し、ちょっとやそっとじゃ魔力に飲まれないのがわかった今、やりたいことはひとつ。魔法の練習だ。と言うより、これをやっておかないと本当に魔力に飲まれないのかの判断がつかない。今までのはあくまで「テイミングをしただけの状態なら魔力に飲まれない」というだけに過ぎない。
「ルナ。魔法の練習をするよ」
アリソンがいうが、ルナは少し迷っている。
『魔力流しすぎちゃうかもしれないよ?』
「そのときはすぐやめるから」
アリソンが言うと、ルナはこっくりと
ルナの魔力は闇属性で、アリソンはそれを持っている人に出会った記憶がなかった。闇属性がどんな力を持っているのか検討もつかない。
とりあえずルナの魔力を使って、ニコラの魔力を使うように、雷属性の盾だけを作ってみる。
「ルナ、ちょっとずつ魔力を流してみて」
『……やってみる』
アリソンは雷属性の盾を作り出す。いつもより大きなそれがルナが魔力を流すことで徐々に大きくなっていく。体の中に魔力が流れ込んでくる温かな感触。魔法を止めるとルナはふっと緊張をといた。
「まずは成功だね。雷属性の盾は出せたけど、闇属性ってどういうやつなんだろう」
コルネリアに尋ねてみたが彼女は首を横に振って「わからん」とつぶやいた。ルナもあまり魔法を使ってこなかったせいかどういう使い方が正しいのかよくわかっていないみたいだった。
『あ、でも人も魔物も眠らせることはできるよ』
「眠りねえ」
あんまりうまく理解ができない。どんな風につかえばいいんだろう。
こういうことをよく知るのはペネロペなので見せに行くついでにいろいろ聞こう。城にも入れることだし。
アリソンはルナをつれて城にもどった。しばらく部屋を開けていたけれどメイドがしっかりと掃除をしていてくれたらしく、
ルナは自分で歩きたがるので地面に下ろすとせかせかと走る。廊下を歩く人たちはルナを見て、それからアリソンを見て不思議そうな顔をする。城のなかで犬を散歩させる人など層はいないのでこれは当たり前の反応だけど。
ペネロペの部屋の前まで行くと見知らぬ男性が立っていた。彼は今まさに部屋をノックしようとしていたところで、アリソンに気づくと、なぜだろう、笑みをうかべた。
「君は……アリソンだったかな? ペネロペの新しい友人でお客さんだね」
彼はそう言った。アリソンより少し年上、テディと同い年くらいだろうか。テディとは正反対の
「失礼ですけど、あなたは?」
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕はロジャー。ペネロペの婚約者だよ」
彼はそう言って
ロジャーはアリソンの足下を見下ろしてルナを見た。ルナは気にすることなくアリソンの周りを走り回っている。
「その子は?」
「最近テイムしたんです。……犬は嫌いですか」
そう尋ねたのはロジャーが少し顔をしかめていたからだった。彼は「うーん」と
「いや、嫌いじゃないんだけど。……昔
誰しもそういう経験はあるだろう。ルナはあまりロジャーに近づけないほうが良さそうだ。
「それで、アリソンはペネロペに用があるのかな」
「この子を店に来たんです。あ、でも何か用があるのであればお先にどうぞ」
ロジャーは少し考えて首を横に振った。
「いや、用ってほどじゃないんだ。僕のほうが出直すことにするよ」
彼は言って立ち去ってしまった。少し悪いことをしたかなと思いつつ、アリソンは部屋をノックする。ペネロペは相変わらず肘当てのついた服を着ていて、読書中だったのがわかる。
「ああ、アリソン! どうしたの? ここ数日部屋を留守にしていたようだけど」
「テイミングをしてたから。ほら、この子。見せに来たの」
ルナを見せるとペネロペは顔を輝かせた。
「かわいい! アリソンついにやったのね! すごいすごい! あれ、じゃあもうノルデアから出て行っちゃうってこと?」
「ううん。少なくともあと一
ペネロペは「なるほどね」と
部屋に通してもらったが相変わらず本の山ばかり。ルナを走らせてしまえば被害は計り知れないだろうから抱きしめたまま部屋に入る。ルナは不満そうだった。テーブルを挟んでむかいにすわるとアリソンは本題に入った。
「あのねペネロペ、ちょっと調べてほしいことがあってきたの」
「何? 調べるのは好きだよ」
「ルナは闇属性を持ってるのね。だからそれについて知りたいなと思って。どんな魔法が使えるのかまったく検討がつかなかったから」
そう言うとすぐにペネロペは本を数冊持ってきた。どれも魔法に関する書物だったが、一冊はどう考えてもおとぎ話だった。
「これ、物語でしょ?」
「でも多分理解のためには重要だから」
そう言われて渋々受け取り礼をいって、部屋をでた。
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次回は火曜日更新です。
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