第50話 後日談2
ラルヴァで俺は冒険者ギルドに向かった。ここの領主とはあまり会いたくなかったからちゃっちゃとアルコラーダに向かうつもりだった。
冒険者ギルドにはミックの姿があった。彼は腕を怪我したままだった。
「ポーションは飲んだので、もとに戻るにはあと二週間くらいかかりそうです」
彼はそう言って苦笑した。
ギルドマスターは辞任というか解雇されたようで、新しい人が指揮をとっていた。外部からやってきた人のようでこれでギルドが変わればいいとミックは言っていた。
冒険者ギルドを出るとアルコラーダに向かった。
ホムンクルスの話があったからだろう、門の近くには以前よりたくさんの騎士がいて、厳戒態勢をしいていた。
俺が門に向かうと俺を捕まえたいつぞやの騎士が立っていた。
「問題を起こすなよ」
顔パスだった。変なことで覚えられていたけれど逆に良かったのかもしれない。
俺はそのまま、ヴィネットのところに行った。
「大変だったみたいだね」
ヴィネットはまた店の裏に俺を連れて行くとそういった。店にはまたファンがいたが、俺を怖がってすぐに退散していった。
俺は出された紅茶を飲むとぼそっといった。
「二つの属性を混ぜられるようになったよ」
「え!! ほんとに!?」
ヴィネットは椅子の上で飛び上がった。
俺は右手の上で燃える水の球を作り出した。
「おおおお!」
「水の性質が火の性質に引っ張られるみたい……」
俺は自分の仮説を話した。彼女はふんふんと頷きながらメモをとって聞いていた。
「ニコラ、相談があるの」
一通り書き終えると彼女は言った。
「なに?」
「僕と一緒に魔法学校にくる気はない? 研究の発表をしたい。もしこの研究が認められればもっと色んな材料を使って実験できる」
「うーん。俺、海とか砂漠とかもっと別のとこ行ってみたいんだけど。見たことない魔物とかもみたいし。それにホムンクルスと戦ってもっとうまく戦えないかって思ったんだ。実戦を積みたい」
マヌエラはナイフを何本も出していた。あれをホムンクルスに突き刺せれば、40以上心臓があったってなんとかなるんじゃないかと思った。
「魔法学校では実戦での授業もやってる。きっと参考になるはずだよ。それにもし研究が認められれば他の属性の『精霊の血』だって研究に使えるんだよ? 他の属性を手に入れられる!! あ、あと、魔法学校とは言っても研究分野は色々あって、その中に魔物を研究してるところもあるし」
ほう。
俺はベッドに横たわっていたときに色んな本を読んでいたときのことを思い出した。世界を見てみたいと思ったが、風景以外だって世界だろう。特殊な魔物を見れるなら魔法学校もいい。
それに、結局俺一人では属性を増やすことなんてできないんだ。詳しくないし。
よくよく考えれば良いこと尽くめだな。俺一人で魔法学校になんて入り込めないし。
懸念点は……、
「アルコラーダみたいに宿代高いと困るんだけど」
「僕が出す」
よし、お言葉に甘えよう。
「わかった、じゃあ行く。けど、その魔法学校って何処にあんの?」
「デルヴィンっていう王都に近い場所」
……ローザが行くって言ってた場所じゃん。
「ねえ、そこにサーバントの訓練施設あるよね?」
「あれ? 知ってたんだ。同じ学校だよ」
俺は苦笑した。
「一週間で論文を書き上げる」
と、ヴィネットが言うので、俺はまたぞろ森を越えてボルドリーに戻った。一体何往復すれば良いのだ。
ルビーは一人で(ナディアとレイラとその他の騎士5人を連れて)森を抜けられたみたいでちゃんとボルドリーの城の戻っていた。
「ってわけで、俺もデルヴィンにいくよ」
「そう」
ローザはそっけなくそう言ったが、口の端が上がっていた。
「ニコラはいつ行くの?」
「一週間後、かな」
「私は一ヶ月くらい後。じゃあ、向こうについたら合流しましょ」
「うん。学校にいると思うからすぐ見つけられると思うけど……」
「私は学生寮に入るつもり。だからそこに来てくれればいい」
「わかった」
それから、俺はエントアのギルドに手紙をかいた。
本当はアリソンに直接手紙を出したかったけど、浮いてる島に手紙なんて絶対届かないので仕方ない。
彼女がいつ戻ってくるかわからないから、戻ったときのために、
『俺はいま、デルヴィンにいる』
とか、近況を書いておいた。
手紙をもって、ボルドリーのギルドに向かった。
壊れたギルドの建物は再建の途中だったので、臨時に作ったテントのなかで彼らは仕事をしていた。
冒険者たちは俺を見ると手を振ったり肩を叩いたりしてきた。その中にロビンがいていそいそと近づいてきた。
「おう、ニコラ。俺たちのパーティに入らないか?」
「あ! ズリーぞ、お前!」
ロビンの言葉に反応して他の冒険者がわらわらとやってきた。というかエントアの冒険者がまだいた。戻らないのだろうか?
「俺、行くところがあるんだ」
「なんだ。じゃあ仕方ないな」
ロビンはにっと笑ってそう言った。
「俺たちはいつでも歓迎するぞ」
「ありがとう」
俺はロビンに言うと、受付に向かった。ハリーは色々と忙しそうに後ろの方で仕事をしていたが、俺を見つけると手を止めてやってきた。
「あれ。いまからアルコラーダに向かうんスか?」
「いえ、戻ってきたところです」
「相変わらず速いっスね」
彼は苦笑した。
「俺はこれからデルヴィンに行きます」
「ローザ様を追いかけてっスか」
ハリーはニヤニヤと笑って言った。ちげーよ。
「研究の手伝いです」
「ははあ。その特異体質をつかってっスね」
俺はうなずいて、手紙を渡した。彼は受け取るとエントアに必ず送ると了承してくれた。
「ここは任せるっス。ホムンクルスがまたでても大丈夫なように、準備しておくっス」
もうあんなのがでないことを祈るばかりだった。
ギルドのテントを出ると俺は空を見上げた。
アリソンは元気でやってるだろうか。
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これで第一章は終了です。
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