第29話 今日母が来ます

 長野の田舎で独居だった母が引っ越してきます。78歳、生活は自立、頭もクリアである。


 ちょうどコロナになる前あたりに母からSOSがあり、私は母を迎えに行き一緒に3ヶ月程同居したことがある。仕事しながら母のことを気遣い、休みの半分はお散歩、カフェ、ランチ、温泉施設などご一緒したが、しかし、当時の私は職場が変わったばかりで超多忙で精神も安定せず、結果同居が困難となり、母は長野に引っ越すことになった。


「大切なお母様だから」


 というミシェルの言葉に最初はまた上手くいかないのでは?親との関係に悩みたくないとネガティブな事ばかりが頭をよぎる。

 実は母も地域に馴染めず、しょうがなく長野で暮らしていた。本当は何処か他の場所で暮らしたいと思っていたであろう母。

 でも、あの時と違う主人が居るので、間に入ってくれて、なんとなくうまく暮らせるような気がしてきた。一週間考えた末、母を呼び寄せることを決めた!


 母のお部屋の準備をコツコツして、私も母を迎えるウォーミングアップしていたような気がする。


「私は察するのが難しいので、して欲しいことがあったら遠慮なく言って欲しい」


 とメールした。涙が流れた。私の中で母の力になれなかったじぶんを許せなかった部分があった。これからはスープの冷めない距離にお互いいるのだから、

「母の人生少しでも幸せに暮らせるようお手伝いできれば幸いです。」


私のひとりしかいない大切な母へ。

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