そんな目だから堕としたい!〜無表情で低身長で貧乳なくせにやたら強引な女の子に無理やり許嫁にさせれたので、彼女を屈服させて彼女の家も乗っ取ろうと思うんだけどやっぱ無理〜

乱痴気ベッドマシン

第一話  できたんなら仕方がない!

 春休みの土曜日に、叩き起こされた。

 目の前に母さんが立っていた。

 「なんでこんな時間に起こすんだよ!」

 「朝九時に言う台詞じゃねぇよ」

 「で、何?なんか用事でもあんの?」

 「とにかく用意しろ」

 「えぇ………」

 パジャマを脱ぎながら考える。

 こんな早くにどうしたんだろうか。

 まぁ大したことではないだろう。

 多分。


 大事だった。

 父母自分三人そろってでっかい和風の屋敷に連れて行かれ、しかも案内を受けた。そしてやたらと広い何十人もで宴会ができそうな畳の大間に座って、人を待つことになった。

 やがてこちらと同じ三人が入ってきた。

 召使いにあーだこーだ言っているので多分この家の持ち主なのだろう。

 また父親、母親、娘とこちらとほぼ同じだった。

 俺と女の子が違う以外は。

 父親は若くみえ切れ長の目をしていて、また線も細かった。

 母親は穏やかな顔つきをして胸が大きかった。

 女の子はおかっぱで背が低くて胸がなかった。華奢で目が冷たいので父親似だろう。

 そしてあちら側の召使いらしき人が

 「我が桐野家の、紫陽花といいます」

 そう父親らしき男に名を言われ、女の子が座ってお辞儀をした。

 「これがうちの真一です!」

 母親が笑いながら俺の背中を叩く。薄ら寒い笑顔だった。

 なんか重圧を感じたのでとりあえず俺もお辞儀し返す。

 「さて、では始めましょうか」

 と、相手の母親らしき人が言った。

 何を?

 「桐野家と鈴木家のお見合いを」

 嘘でしょう?


 で、始まったはいいものの、早くも別室に俺と紫陽花ちゃんは通された。両親子はあの部屋に残った。

 お見合いってこんなんだっけ?やったことないから知らんけど。

 ちゃぶ台、そして座布団が二個、ちゃぶ台を挟んで向かい合わせに置いてあった。

 とりあえず俺は先に座る。

 すると紫陽花ちゃんが向かいの座布団を持ち上げて俺の隣に持ってきて、そして座った。

 ………どういうことなんだろう。

 こういうときは普通に向かい合わせていろいろ話すんじゃあないんでしょうか。おかしいね!

 彼女が身体を寄せてくる。とても軽く柔らかい感触。しかし表情は一切変わらない。

 目が大きい!そして顔が小さい!体がすごく細い!

 かわいい!

 そして怖い!

 「………貴方は………」

 彼女がささやいた。

 ひどく抑揚のない、感情のない声だった。

 「………もう、逃げられませんから」

 「何で?」

 「………文字通りの意味です。貴方を、逃がしません」

 「………………勝手に仕組まれたんだから、反対も自由だと思うんですけど」

 「………貴方の両親が何をする気か、もう、気づいています」

 え?

 なになにどういうこと?

 謎めいてるぞ。

 ゼロ年代のエロゲみたいに。

 「………明日、待っていてくださいね。約束ですよ」

 「………あ、はい………」

 ようわからんが。

 約束できるんならしとこう。

 

 部屋のふすまが叩かれる。

 召使いが現れた。

 「大広間にお戻りください」

 戻らせてくれ。

 帰らせてくれ!


 「絶対に、このチャンスを逃すんじゃないぞ」

 母さんが家に帰ってきて、家族三人でテーブルに座って、そしてそう言った。

 「なぁ、どういうことなんだよお見合いって!俺何一つ聞いてなかったんだぞ!」

 「アンタ前もって言ってたらなんか変なこと言おうとするでしょ。そうなるのを見越してぶっつけ本番で連れて行ったの」

 「………で、桐野さんとことはどういう繋がりなんだよ」

 「母さんのヤク●トの配達先」

 「遠くね?」

 「あの家のお母さんがあんな大きな家なのに、わざわざ受け取りに出てきてくれてね。そんでだんだん世間話をしていく内に、仲良くなって」

 「ふーん」

 「ある日桐野さんとこの跡取りの話になったの。紫陽花ちゃんがいるけど、できればちゃんとした男にしないと業界がうるさいって」

 「何の業界だよ」

 「武道」

 「へぇー」

 「そこでうちの真一はどうですかって、後日言ってみたの」 

 「何で?」

 「うちの真一は空手でインターハイ優勝したんですよって」

 「おい!それって経歴詐称だろ!馬鹿かよ!」

 「安心しな、父さんが資料と証拠を全部作ってくれた」

 父さん!

 グラフィックデザイナーの父さん!

 俺が物心ついた頃から母さんの尻に敷かれていた父さん!

 今一言も発さず虚空を見つめている父さん!

 かわいそうに。

 「………まさかさ、俺を無理矢理嫁がせようとしてんじゃねぇよな」

 「戦略的と言いなさい」

 「同じだよ!」

 「安心なさい。さっさと財産横取りして夜逃げするから」

 「えぇ………」

 「母さん若い頃結婚詐欺師だったの」

 「えぇ!」

 「だから任せときなって。これさえ成功すればアンタ大学に行けるんだよ」

 「逆に行けないの⁈」

 「私が世界一周旅行五回行ったからね」

 ひどい親だ。

 まぁ勝てないから黙るけど。

 「で?あんた紫陽花ちゃんとはどうだったわけ?まぁ、あんな暗そうなことは会話も弾まないか」

 貴方を逃がさない。

 貴方の両親がしようとしていることはわかっている。

 そして、武家。

 明日、待っていて。

 「大した話はできなかったよ」

 どうやら、俺は今日は何もしないでいた方がいい気がしてきた。

 やな予感がする。

 それは見事に的中することになる。


 その後普通に飯を食って風呂入って歯磨いてベッドに入った。

 しかし眠れやしなかった。

 桐野紫陽花。彼女の言っていたことが頭にひっかかる。

 俺は馬鹿じゃない。

 今夜の内に一家がどうにかなることはわかる。

 まだちゃんと父さんのイビキが聞こえる。

 普段しゃべれないんだ。それくらい出させてやってくれ。今夜も、一晩中ーーーー。

 

 でもとっとと消えた。


 気持ち悪いくらいの静寂だった。

 まさかと思ってそっと起きドアを開ける。

 親の寝室に向かう。

 

 まるで元からそうだったように、ベッドは誰一人寝かせず、そこにあった。

 ホテルのチェックインしたばっかみたいな状態だった。

 どうしよう。遂にやってきた!

 でも逃げたとしても。


 明日、待っていてくださいね。約束ですよ。

 

 約束なのだ。

 無視してそこにいないといけないのだ。

 俺はとっとと寝床に戻った。


 そして朝、目覚めると全く違う景色がそこにあった。

 しかしこの部屋には見覚えがあった。

 あの、彼女にささやかれた部屋だった。

 「約束、守っていただけましたね」


 桐野紫陽花が隣で寝た状態で話しかけてきた。


 「わっ!」

 さすがに飛び起きた。

 「………え?待って?どういうこと?」

 「………これを見れば分かりますよ」

 彼女はすぐ近くにあったスマホを手に取り、そして見せてきた。


 そこにあったのは、豚になってしまった俺の両親だった。二人のパジャマと髪型がちゃんと存在していたのでそれだけはわかった。


 「………でもこうなってる仕組みはわかんねぇよ?」

 「貴方の両親は、一見おいしそうに見えますが食べ続けると豚になってしまうもので………こうなりました」

 「千と千●⁈」

 馬鹿みたいだが、なんかもうこんな風にさらわれたんなら信じるしかない。

 「………わかっていたんだろ?全て」

 「えぇ………お見合いが決定してすぐに、隠密を送りまして傍聴していたのです」

 「そしてあのお見合いが終わった一番緩くなっていた親をさらったわけだ。あと俺も」

 「そういうことでございます」

 さっきから無表情で言ってくるので薄気味が悪い。声色も何の抑揚もなく、顔は凍っているようだ。

 「………で、俺はどうなるんだよ。こうなった以上、俺もどうなってもおかしくないじゃんか」

 「えぇ。ちゃんと、貴方には、罰を用意しております」

 「それは?」


 「私の許嫁になることです」


 「………何で⁈」

 「そう私が決めたのです」

 「いや、俺が許嫁になって遺産ぶんどることを危惧して親をああしたんだろ?じゃあ何でそうなるの?」

 「………貴方は私の家の人間になるのです」

 「あーなるほど………え?」

 彼女は戸籍表をどこからか出した。

 「貴方は、今日から桐野真一になったのですよ」

 「オアー!」

 ショック。

 でも仕方がないという気分が勝る。

 「………私は、貴方のことが気になったのですよ。ですけど片棒担いだ責任はとってもらわないといけません。よって、許嫁として私の言う通りに日々を過ごしてもらい、その過程で心を洗ってもらおうと」

 ………滅茶苦茶だ!

 でも武家だ。人を簡単に音もなくさらえるのだ。逆らったらどうなるか。ならば仕方がない。

 「………わかりましたよ」

 「判断が速くて嬉しいです」


 なんだよなんだよ。

 好き放題してくれちゃって。

 俺はそもそも母さんに仕組まれてあんなことになってしまったんだ!

 だからこんな目に遭う必要なんか無いはずだ!

 ………でも母さんのために怒るのは嫌だ。大学にも行かせてくれない母親なんて養豚場で死ねばいいのだ!

 俺は、俺と一応父さんのために、コイツを屈服させてやる!

 そしてこの家を乗っ取って、財産を手に入れて、なんかこう、好き放題やってやる!

 そうここに決意する!


 「お腹、空いてますよね?私、和食得意なんですよ」

 「それは楽しみだ」

 とりあえず腹が減ったのでさっきのは一旦置いておこう。

 腹が減ったら戦えないからね!

 かの大広間に案内されしばらく待つと、後ろから彼女がやってきた。


 「カニ玉です」

 「何で⁈」

                  

 


 

 

 

 

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