財布扱いしてくる高嶺の花、別れようと言ったら泣きついてきて甘々になった

タヤヒシ

第1話 諦め

「明日も友達と遊びに行くからとりあえず3万そこに置いといてねえ」


ベットでゴロゴロしながらそう言ってきたのは俺が付き合ってきた彼女、瀬戸琴梨だった。


「ええ、今月もう結構厳しいのに」

これでも一応半年前に俺が告白して晴れて恋人になった仲だ。


当時はまだよそよそしくて可愛かったけど今や—

「財布は黙ってなさい」

俺がお金ポンポン出してくれる財布の扱いということを隠す気すらない。


別に嫌いになったわけじゃない。ただ、彼女にはもっと相応しい人がいる。

これほどの美人なのだからきっと俺なんかよりもっとイケメンでお金持ちと付き合える。


「ねえちょっと聞いてる?」

だからもう別れようと思う。俺じゃあ力が足りない。

これからだって付き合っていきたいけどそっちが俺に好意がない以上どのみちこの関係は長く続かない。


「ねえ琴梨」

琴梨は「なによ」と少々怒りっぽく聞いてくる


「別れよ」

「え」

その「え」はどこまでも意をつつかれて抜けた声だったが。


「いいわよ。ちょうど最近私も飽きてきて別れようと思っていたし」

どうやら彼女もそう考えていたらしい。


「そっか。ならちょうどよかった。明日荷物片付けてこの家出るから」


今彼女とは同棲中だ。とは言っても同棲始めたのは数日前というほど短くて。当時はこう言われて同棲を始めた—

「財布近い方が取りやすいし」


ちょっと刺さったけどその通り俺はただの財布としてしか起用しなかったな。


当然そんな理由で同棲を始めたから何も起こらなかった。


この生活ももう終わりだ。


「ねえ今お金ないんでしょ?どこに住むのよ。お金いらないからしばらくここに居てもいいわよ」


「いや大丈夫、友達のうちに泊まるから。それに元カノの家に泊まるのもなんだか気まずいし」

せめてもの優しさからなのか琴梨はそう提案してくれたが断っておいた。


「元カノ…」

琴梨が何か呟いているようだが俺は明日でこの家を出ないといけないから荷物の片付けを優先しよう。



翌日——


「じゃ、今までありがとう」

俺は別れを告げようとするが—

「やっとあなたのやる気のない顔が見られなくなってスッキリするわ」

最後まで嫌味言ってくるから相当俺のこと嫌いだったのだろう。


「ならおめでとう。次はもっとイケメンでお金持ってるいい男を探すんだぞ」

「言われなくたってそうするわよ」


「じゃあ、バイバイ」

俺は少しだけ寂しく感じ、結構大きく手を振ったのだが。


「…⋯⋯⋯」

彼女は遠くから見てくるだけで何も言わなかったし動かなかった。

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