第4話 ナニをしてるって?

「固い……固いヨォ」

絶世とは言わないが、すれ違ったら十人中七人は振り返るであろう可愛い少女、春元の弱みを俺は握っていた。


「はぅー……こんなの固すぎるよぉ……」


30センチ先にまで近く寄せた顔は恥ずかしそうに文句を言った。




こんなにも可愛げがあって、無邪気な少女相手に固くしてしまうことに、背徳感を覚えるほどであった。


その固さがもたらす攻撃力は、驚異的であった。

「んっ……」


彼女は弱みを握られている身なのに、観念したのか、声を溢して自分の奥底を曝け出す。


気持ちを切り替えた一手。


「吉田くん、きて!」

「本当に……いいのか?」

「自分でやっておいて今更でしょ?」

「……行くぞ」


俺たちは互いに汗だくになりながら指先を器用に動かした。


その指先のテクニックだけで大体の経験がわかる。


彼女の指の動きは拙いものだった。


彼女の未経験を経験済みに塗り替えたことにどこか喜んでいた自分がいた。


「バシッ、バシッ」

「あっ、力強いって、あっ、ダメッ!」

「もう遅い!」


——


「……負けた」

「川端さん才能あるかもね、こんな短時間で上手くなるなんて」


「もう!初心者にそんなことするのはずるい!」


やっぱり将棋は楽しい。

春元がやったことないというから誘ってみたが可愛い将棋友達ができるのも悪くはないな。


なぜ将棋をしているかって?

そりゃあ将棋が好きなのと、なんか青春っぽい。


あと将棋って相手の手番の時ずっと顔眺められるから楽しい。


そして将棋の誘いも次の映画見るための土台でもあるのだ。


「あと、吉田くん時計叩く力強すぎ、ずっとバシッて鳴ってたよ?」


あぁ、時間測るための時計か。


「ごめんごめん、つい癖で、熱くなったら力が強くなってしまうんだ」

「なるほど、だけどそれより—」


納得したようだがまだ疑問があるようで、続けて言う。


「なんで私達、公園で将棋してるの?」

「楽しいでしょ?」

「思ったより楽しかったけど、ってそうじゃなくて!」


理由は単純だ。アニメオタクだからそういう青春っぽいことしたかっただけだ!


でも今まで付き合ってくれる女子という単語がなかったので、この際ちょうどいいと思った。


「あぁ、ちょうどいいと思ったからだよ」

「ちょうどいい!?」

いつものノリで胸を隠して軽蔑するような視線を—って軽蔑すんなぁ。


「一緒に遊んでくれる友達にしてはちょうどいいってことだよ」

「そっか、友達いないんだ。だったら仕方がないね」

「おい同情すんな」

「ふふ、案外哀れなのね」


やばい泣きそう、俺の方が立場上のはずなのに。


でも、それだったらこの話題に乗じて映画に誘おう。


「はいはい。じゃあ可愛い春元さんは、友達もいない哀れな僕と一緒に映画にでも行きませんか?」


「かっ、可愛いって。ま、まぁ仕方がないわね。一緒に行ってあげるわ」


なんか、チョロいな。心配になるレベルに。





どうも作者のタヤヒシです。

今回はな将棋回をお送りしました。

紳士な皆さんはきっとぎょくと読みましたよね?


固い、というのは将棋の守りのことです。

深いところ、というのは盤上の敵の陣地のことです。

指先のテクニック、というのはこまを掴む熟練度のことです。


もちろん紳士な皆さんはわかっていると信じています!!


ちなみに読者様方からした青春はどういうものか知りませんが、アニメのようなストーリーを送る、というのが主人公吉田にとっての青春になっています。


半年後の作者からのメッセージ

ヒロインの名前変えさせていただきました。

まぁ理由はネーム付けが苦手だからって知り合いの名前を使ってたが恥ずかしくて変えた、です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美少女の弱みを握ったら何をする?俺は脅すふりをして楽しもうと思う タヤヒシ @tayahishi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ