運次第の宇宙旅行②
「ん・・・」
天都が目を覚ました時、宇宙へ来ていたということを忘れる程だった。
―――ここは・・・。
―――地球か・・・?
その理由はロケットに乗っていたはずなのにロケットはなくなっていて浮遊感もなかったためだ。
―――地球、にしては自然があり過ぎる・・・。
日本でこれ程の大自然に囲まれたことがなかったためか、地球のアマゾンにでも不時着した。 ように最初は思ったのだが、どこか様子がおかしい。
―――何だ、ここは・・・?
周りはジャングルのように木が茂っているのだが、その大きさが尋常ではなかったのだ。 屋久杉が子供に見えるかのような幹、生い茂る葉に隠れ全体の把握すら困難な全長。
天都が世界の全てを知っているわけはもちろんないが、今まで見たどんな木よりも大きかった。
―――俺が知らないだけで秘境ってこんな感じなのか?
―――って、太陽に輪っかがあるんだけど!?
―――もしかして別の星・・・?
持っていた端末で気体成分を測り、ほとんど地球と同様に呼吸できると分かった。
―――空気があるだって?
天都が知っている限り、地球外で他に生命が活動する惑星は未だ見つかっていない。 だが現実にここには気体があり、樹木が茂っている。
恐る恐るヘルメットを取って空気を吸ってみると確かに呼吸をすることができた。
―――・・・凄いや。
―――ここは地球じゃないんだよな?
―――一体どこだろう・・・。
―――そう言えばみんなは?
辺りを見渡すも大自然が邪魔していて先を窺えない。
―――とりあえずみんなと合流するか。
―――みんなは近くにいるはずだ。
「おーい! 行定、佳与! 恵人! 無事かー!?」
しばらく幹の間を抜け捜していると声がした。
「天都ー!!」
「佳与か!?」
蔓植物を威勢よく引き抜き、道を作ると声の方へと走った。 見たところ異常はなく佳与は無事のようだ。
「佳与!」
「天都!! よかった、合流できて。 それにしてもここどこ? アフリカ?」
「いや、あの太陽を見てみろよ。 太陽って言っていいのか分からないけど」
「うわ・・・。 綺麗」
「って、そうじゃないだろ! とにかくここは地球ではないっていうことだ」
「それってヤバくない? 未知の生物とかいるのかも」
「可能性は高いだろうな」
その言葉を聞き急に不安になったのか佳与は身体を震わせた。
「見たところ佳与一人だけど、他の二人は?」
「まだ会ってない」
「そうか。 なら一緒に探そう」
二人は当てもなく歩き始める。 太い幹に申し訳程度に目印をつけ進んでいく。
「にしても、おかしくない? だって、アタシたちって地球に出てすぐ事故が起きて不時着したんでしょ? そんな遠くには絶対行けないはずなのに、こんな植物だらけの惑星に来るなんて」
「あの太陽の輪が何らかの現象で、実は本当に太陽っていうことか?」
「うーん・・・。 写真を撮ってとりあえずインステにアップしたい!!」
「暢気なこと言ってるなぁ・・・。 周りの木だって、こんなデカいの見たことないだろ?」
「まぁね。 変わった虫とかいたら・・・。 うえぇ、どうしよう!? もし1メートルくらいの虫が出てきたら!!」
「俺たちは武器を持っていないんだ。 逃げるしかないな」
「そうなるよね・・・。 というか、ヘルメットを取っても大丈夫なの?」
「あぁ、平気だ。 念のため調べたけど地球の空気と構成比はほとんど変わらなかった」
佳与もヘルメットを取り空気を吸った。
「本当に吸える・・・。 自然が多いからか空気が美味しい。 というかこれって大発見じゃない!? 地球外でも自然豊かな星を見つけたら人間でも住めるって!!」
「あくまでこの星で大丈夫っていうだけの話だよ。 それに地球でだって安全じゃない場所なんていくらでもあるんだ。 あまり気を抜くな」
「はーい」
しばらく歩いて捜しているとか細い恵人の声が聞こえてきた。
「佳与ちゃん! 天都くん!」
「恵人! 無事!?」
「うん、平気。 でも一人でとても怖かった・・・」
恵人にもヘルメットを取ってもらった。 この先何があるのか分からないため酸素は温存しておく必要があるのだ。
「私たち帰れるのかな・・・?」
「そうだよ! アタシたちのロケットはどこへ行ったの!?」
「・・・分からない。 でもロケットに乗っていたんだからロケットもこの星にあるのが自然だと思う」
「じゃあさっさと行定も見つけてロケットを探そう!」
そこで恵人は不安気な声を漏らす。
「でもロケットは故障しているんだよね? 修理できるのかな・・・」
「確かにな・・・。 この星に部品の代わりとなるものがあればいいけど」
故障しているのかは不明だが、貯蔵エネルギーを使い尽くしたのは間違いない。 それを何とか補給できなければ、たとえロケットを見つけてもどうにもならないのだ。
「その前にロケットを見つけるのが先でしょ」
「ロケットの前に行定を見つける方が先だな」
「この星に永久に住まなくちゃいけないとかになるのかな・・・」
三者三様、まとまりのない言葉に天都は少々不安を覚える。 ただそれも行定と合流できれば多少改善されると思っていた。
「人間が生きれる星で本当によかったな。 この星以外の場所だったら今頃全員お陀仏だよ」
「ロケットを探すと同時に折角だからこの星も探索してみてもいいかも?」
「寧ろ探索すべき! 食糧とか何も持ってきていないんだよ?」
「ロケットが見つかっても壊れているだろうから、すぐに帰れないのは確定しているからな」
話していると行定の声が聞こえてきたのは幸運だったのか。 ただその声は明らかに切羽詰まっていた。
「た! 助けてくれぇぇぇ!!」
「行定の声だ!!」
三人は慌てて声の方へ走る。
「「「ッ・・・!!」」」
三人は広がった光景を見て一様に息を呑んだ。 腰が抜けている行定の目の前には、自分たちと同じくらいの背丈のバッタがいたのだから。
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