【短編集】実は互いに好き同士な幼馴染が、思い切って「好き」を伝える話

春野 土筆

第1話 ポッキーゲームで「好き」を伝える話

第1話 俺様気取りな副会長

 どんよりとした雲に覆われた一月十一日。

 生徒会長の環(たまき)は、いつも通り生徒会室にこもって書類にチェックに勤しんでいた。年度末が近づくこの時期とあって、増えつつある業務をスムーズに進めるための準備みたいなものだ。

 放課後とあって窓の外からは部活動やら下校する生徒達の喧騒が聞こえてくる。


「やはり、少し冷えるな」


 ポツリそう呟いた彼女はブランケットを肩にかけた。

 冬真っただ中のこの日は、特に冷える気がする。

 エアコンもストーブも設置されていない、このオンボロ教室。

 環はカイロを持ってこなかったことを少し後悔していた。唯一持ってきている防寒具を身につけ、少しでも保温する。


(琉衣(るい)ももう帰ったのかな?)


 肩をすくめつつ、幼馴染の事を考える。

 琉衣は生徒会の副会長を務めている人物であり、環の同級生だ。

 副会長は会長に比べて仕事も少ないためあまり生徒会室に来る必要はないのだが、環に会うためにほぼ毎日顔を出している。

 というのも、瑠衣は環の事をライバル視(?)しており、「どこで考えてきたんだ」というような勝負を仕掛けてくるのだ。手を繋いで照れた方が負けとか、ずっと見つめ合って先に視線を逸らした方が負けとか。

 結局いつも環が勝ってしまっているのだけれど。


(案外、淋しいものだな)


 環は自分の感情に気づき、苦笑する。

 教室内には、今のところ彼女しかいない。

 生徒会は基本的に週に一、二回くらいしか集まらない規則となっているので、当然と言えば当然である。やはりこんな寒い日、生徒会に顔を出す生徒はいないのが普通だ。

 紙が擦れる音だけが響く。

 と。

 しばらくして、扉が勢いよく音を立てた。

 顔を上げると案の定、見慣れた顔がこちらを見つめている。

 環は思わず顔を綻ばせた。


「今日も来たぜ」


 よっ、と彼女は男勝りな笑顔を見せる。

 その、女子にしては低めな声の響きが心地いい。


「待っていたよ」


「おっ、会長様が俺を待ってるなんて珍しいな」


 そう言いつつ、環の前に歩み寄る。

 凛とした猫目に、少し乱雑なショートカット。そのスラッと伸びた四肢はモデルのようなプロポーションを思わせるほどだ。

 歩く動作一つとっても絵になる彼女は女子からの人気も高く、「高嶺の花落とし」という異名まで付けられている。どんな女子でもキュンとしてしまうその風貌はこの学校ナンバーワンと言ってもよく、生徒会内でも隠れファンが多い。

 琉衣はその整った相貌をグイッと環に近づけると、不敵に微笑んだ――。

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