第110話 配信にエラー

 ヴァリアンとボス。SSランクの戦闘力を誇る2つの強大な魔力が衝突する。


 普通、魔力は実態を持たない。しかし、あまりに濃く強く多いせいか具現化し、可視化し、現世に直接影響を与え始めたのだ。


 黒と白。2つの魔力は縄張りを奪い合うように押し合い、やがて収束して弾けた。


 弾けた魔力は旋風と衝撃波を巻き起こし、黒の魔力により枯れた大地を荒らしていく。


 木が根元から千切れ、大地は地割れを起こし、空は雲ひとつない晴天となった。


 そんな災害地のような地上で、まるで影響を受けていないかのように佇む強者が2人。


「ケケケケケッ!」

「強いな……だけど、勝つ!」


 衝撃波が止むと同時、開戦。


◇◇◇


 魔力の衝突により生まれた衝撃は、ヴァリアンの配信にも影響を与えていた。


『え』

『え?』

『は?』

『まじか画面見えなくなった!』

『やばいやばいやばい』

『え、うそ。死んじゃったの?』

『いや、配信が続いてるってことは死んでないよ。落ち着いて』

『俺たちのヴァリアンが負けるはずないだろ』

『そっか、そういえばそういうシステムだったね』

『そうじゃんマジ焦った』


 突然、配信の画面が暗転したのだ。


 配信者が死ぬと同じような現象が起こり配信が強制切断されるので、視聴者はヴァリアンが負けたのではないかと騒ぐ。


 しかし、配信が続いているのでその心配はないというコメントにより、安堵の空気が広がっていった。


『お、画面戻ったよかった〜』

『ほんとにビビった』

『プレッシャーもだけどいろいろ心臓に悪いわこの配信』

『老人ワイ、かなりキツイ』

『↑今すぐみるのやめろwww』

『ワロタwww』

『老人も見てるの草』


 配信画面が再起すると、ヴァリアンが元気に戦っている姿をツマミにコメントが盛り上がる。ふざけたコメントがいくつも出るのは、信頼の現れだと言ってもいいだろう。


 そして、とある一つのコメントが流れる。


『あれ? モザイクなくなってね?』


 配信の不具合により、ヴァリアンの顔モザイクがなくなっていることに気がついたのだ。


 このコメントをきっかけに、コメントはさらに盛り上がっていった。


『え、ほんとじゃん!』

『うわがちだ。わんちゃん仮面の隙間から顔見えそう』

『どう考えても見えねえwwwwww』

『ざんねーん。でも、もしかしたら気づかずに取っちゃうかも出し期待しとく』

『うわ! これは絶対イケメン! 目が離せない!』

『おまいら、戦闘について語れよwwwww』

『いや、それはそうなんだけど……』

『回避合戦だからかな? 動きが速すぎて見えねえのよwwwwwwwwwww』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る