第9話 配信モチベ爆発中!

「今日は何の魔物を狩ろうかな〜」


 朝起きて朝食等のルーティーンを終えたので、配信について少し考える。誰かに見てもらえるということは本当に嬉しくて楽しくて、モチベーション爆発中なのだ。夢でも配信をしてるくらい。


 次の配信は何人来てくれるか、何の能力を使って何を倒そうか、始まりの挨拶は何にしようか。そんなありきたりなことを考えているだけで、いつのまにか30分が経過していた。恐ろしい……。


「ん〜。もう始めちゃうか」


  配信のことを考えていると、早く配信がしたくてうずうずしてくる。まだ朝早いので視聴者は少なくなるかもしれないが、始めちゃおう!


「0人だけは勘弁してくれ……」


 そんな俺の願いに応えるかのように、配信を始めると早速いくつかコメントがついた。


『おはよー』

『朝早いね〜』

『眠いけど見たいから来ちゃった』

『アラームより有能で草』


「あーあー。聞こえてますか?」


 早朝から配信を見てくれたことに感謝の言葉を述べたいところだが、まずはマイクテストから始める。


 稀に、本当にごく稀に配信の不具合で声が入らない時があるんだよな。配信は魔力の難しいシステムで出来ているそうなので、魔力の多い魔物が暴れた地帯とかで配信をするとたまに不具合が起きるらしい。


 それに気づかずに話している配信者を何人か見たことがあるが、見ている分には結構面白かった。自分がそうなったら恥ずかしいので嫌だが。


『聞こえてる!』

『聞こえてますよ〜』

『くぅ〜。朝からイケボが沁みるわ』

『良い休日の始まりやでぇ〜』

『↑お前仕事してないだろ』

『は?』


 よし、ちゃんと聞こえているようだな。


 思った以上にコメントがついたが……みんな早起きで健康的だなぁ。

 

「はい、みなさんコメントありがとうございます! まだまだ早朝ですが、早速配信を始めていきたいとおもいます!」


『楽しみ』

『期待』

『今日はなにするの?』

『今どこにいるんですか?』

『顔出しして欲しい!』


「改めましてみなさんおはようございます、ヴァリアンと申します。

 さて、今日も魔物狩りをしようかなと考えております!

 何を狩るのかはまだ決めていないので、戦って欲しい魔物や使って欲しい能力をコメントにて募集したいと思います!」


 もしかしたら新規の視聴者がいるかもしれないので、まずは挨拶から。名前を覚えてもらうのって本当に大事らしいからな。


 そして、今日の配信内容は視聴者によるリクエストの中から決めることにした。


 これにより視聴者の趣味趣向を知ることができるし、より見ていて面白い配信となることだろう。


 それから、みんなの意見をもとに配信をしていくことで親近感や一体感を覚えさせることができると考えている。


 リクエストが採用された者は、喜びや少しの優越感に浸るだろう。そして、またその感情に浸るために俺の配信を観に来るようになる。


 俺の想像の中では完璧なプランだ。


『リクエストか〜珍しいね』

『んね、なんか考えるの楽しいかも』

『んー。トレントの大群燃やしてみた! とか?』

『小竜と空中戦してみて!』

『オークの集落をマグマ漬けにしてほしい。』


 すると、早速リクエストがいくつか寄せられた。


 んー。結構エグくて笑えるなwww


 トレントは炎が木に燃え移って山火事を起こすのが心配だし、魔界の小竜はちょっと手に負えないかなぁ。


 オークのマグマ漬けに関してはなんというか、かなり『女騎士』の意識を感じた。クッ、殺せ!


「『オークをオークで倒して欲しい』ですか。結構楽しそうな企画ではありますが、ちょっと今日オークになるのは遠慮しておきたいと思います。」


 オークに殺意を抱く女騎士(勝手な推測)が配信を観にきているからな。俺までオークになってしまったとしたら、あまりの地獄絵図に泣き叫ぶだろう。クッ! 殺せぇ!


 その後もいくつかコメント拾ってコミュニケーションをとっていく。


 すると、視聴者数の稼げそうないい感じのコメントを発見した


「お、『昨日見つけたゴブリンの集落でゴブリンキングと戦ってほしい。』これいいですね! ゴブリンキングはBランクの魔物なので少し厳しい戦いになると思いますが、頑張りたいと思います!」


『クッ……ゴブリンか。命拾いしたなオークどもめ』

『お!ゴブリンキング!かっこいいから好きなんだよなぁー』

『いや、Bランクって……危なくね?主Eランクよ?』

『確かに。楽しませてくれようとするのは嬉しいけど、無茶は良くないよ』

『小竜勧めてたやつがなんか言ってて草』


 俺の身を心配してくれるコメントがいくつか送られてくる。確かにいきなりBランクに挑むのは結構危なく見えるだろう。


 しかし、ゴブリンキングならば倒せる自信がある。ゴブリンキングに対して俺は相性が良いので、人間界にいた頃もゴブリンキングは何体も狩ってきた。


「『流石にゴブリンキングは危ない』……心配してくださりありがとうございます! 

 確かにBランクはあまりにも格上ですが、ゴブリンキングなら絶対に勝てる作戦があります!

 ですので、どうか楽しんでご覧ください!」


『まあ、そう言われたら黙って見守るしかないよね』

『結構自信ありそうだね』

『楽しみー!』

『クッ!』


「それでは、早速ゴブリンの集落に向かいたいと思います!」


 なんとかみんな納得してくれたようなので、早速ゴブリンの集落へ向かう。


 適当に雑談しながら進むと、10分ほどでゴブリンの集落へ到着した。


 さて、早速ゴブリンキングと戦いたいところだが、ゴブリンキングには面倒な特性があるんだよな。


 それは『部下が全滅してから出現する』と言う特性である。割と強いモンスターやダンジョンボスにありがちな性質だけど、普通に面倒なんだよな。雑魚処理に時間がかかるし。


 しかし、今回は数は多かれたかがゴブリンであるサクッと倒していこう。


..................................................................


ゴブリンメイジやゴブリンナイトなどの上位種も出現したが、1時間ほどでモブを全て倒し終えることが出来た。


「おそらくゴブリンを全員倒し終えました! 

 そろそろゴブリンキングが出てくると思いますので、ここからはコメントが拾えません。応援よろしくお願いします!」


『もう倒し終えたのかww』

『ガチでEランクには見えん』

『頑張え〜』

『いのちだいじに!』


 最後にチラッとコメントを確認すると、沢山の応援コメントが書き込まれていた。キモチィ〜。


「ふぅ……」


 さて、気持ちを切り替えよう。


 おそらくゴブリンキングが出てくるであろう豪華な扉に警戒を巡らせ、いつ戦闘が始まっても良いように備えておく。


ドン、ドン、ドン!


 予想通りの場所から、足音を響かせたゴブリンキングが登場した。


あとがき


3/8 加筆修正いたしました。

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