第3話 魔界に到着

「ここが魔界か……」 


 俺を魔界へと追放した魔法陣が光を失い、やがて空気に溶けたように消えていった。


「こっちでは、人気になれたら良いなぁ……」


 名声値の権力は今まで身にしみるくらい理解していたつもりだが、最低ランクというだけで魔界への追放までやられるとは思っていなかった。


 やっぱ、名声値の力は偉大だ。名声値があれば金や人望には困らないし、システムから報酬や特典を得て強くなることができる。


 だから皆、配信上で必死に自分を偽ったり、命をかけたり、人を利用したりする。俺も、命をかけて名声値を獲ようとするうちの1人だった。


 あの女たちは、人を利用して人気を稼いでいた人種なのだろう。


 たぶん俺に声をかけてきたのも、高身長イケメンと美少女三人組のダンジョン攻略! みたいな企画で女のファン層を獲得するためだったんじゃないかな。



 やっぱり、女性だけのパーティーだと男のファンは増えても女のファンは増えにくいらしいし。



 それで、いざ俺の能力を見てみればハズレ。俺のルックスで女ファンを得ることに失敗した女たちは、悲劇のヒロインを気取ることで男ファンを得る方向にシフトしたのだろう。


「ほんと、クソだなぁ……」


 魔界に追放された絶望感はもちろんある。しかし、それを凌駕するほどの、クソみたいな人間界からおさらばできた爽快感が胸の中に存在した。


「ま、環境が変わればなんとやらって言うし、ワンチャンバズっちゃったりして!」


 たしか、名声値をSまで上げることができれば、人間界や魔界などさまざまな世界に移動できるようになるらしい。


 そしたら、あの女たちを1発ずつぶん殴ってやる。それが、ひとまずの目標。魔界に追放されたのにそれだけで済ましてあげるんだから、感謝して欲しいくらいだ。

 

 目標を設定したことで、思考が落ち着いてきた。


 ようやくまともに頭が働くようになったので、一旦周囲を見渡す。


 どうやら、飛ばされた先は森のようだ。魔族の集落のど真ん中に飛ばされるよりはマシなので、ひとまず安心。


「しっかし、ほんとに魔界ってこんな禍々しいんだなぁ……」


 空は赤く、地面にはヒビが入り砂漠のように乾燥している。しかも、よく見てみると、周囲の植物の多くが魔物だった。


 こんなに魔物が密集している場所が普通に存在するとは。やはり、魔界は恐ろしいな。先が思いやられる。





 ひとまず、身動きを取るためにもこの植物魔物たちを倒そうか。


「せっかくだし、配信しよっと」


 どうせならということで、配信を開始する。しばらく視聴者数を眺めてみるも、相変わらずのゼロ。



「ま、そりゃそうか」



 ちょっぴり凹んだが、気にしない気にしない。



 もしかしたら、魔族には俺の能力好きな変人もいるかもしれないしな。



「おっと、危ない危ない」


 人間が魔界にいることがバレると厄介なことになりそうだ。配信の設定で顔が見えないようにしてと。よし、これで設定は完璧だな。

  

「そんじゃ、早速攻撃してみるか」



 

 

 


 

 


 

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