第97話 結界の崩壊と第1の炎
「第5結界割れるぞ! 近接隊は防壁まで下がれぇぇぇぇ!」
パリンッ!
戦闘開始から10分ほど経過した頃。戦場にケンさんの指示が響き渡ったと同時、最後の結界が破壊された。
「クソッ、思ったよりも持たなかったな」
20分ほどは持つと思っていたのだが……想像していたよりも、高ランク魔物の数が多かった。
Cランク以下の魔物は大体狩り尽くしたと報告が上がってきたのにも関わらず、未だにあれだけの魔物の大群がいるのだから恐ろしい。
パッと見た感じではあるが、Bランクが500体以上、Aランクも100体以上は居そうな感じがしている。
「いや、これだけ持てば上出来だろう。そもそも、当初の作戦にはこの結界はなかったからな。あるだけありがてえもんだ。」
「そう言ってもらえると助かります……っ!」
度重なるダンジョン探索により冴え渡った危機感知能力が、突如サイレンを鳴らした。
【水龍の翼】【大水妖の右腕】【雪男の左腕】
視界に炎が映るよりも前。肌が熱を感じたその瞬間、自身の体を水属性魔物に変化させ大量の水を放出した。
バァァァァン!
大量の水が炎によって水蒸気に変わり、爆発が起こった。水の障壁を展開していたおかげか、幸い魔族側に被害はないようである。
【大風妖の瞳】
敵の状況を把握するため、視界を遮る蒸気を風で蹴散らす。
すると、爆発により被害を負った魔物の群れと、一切無傷の炎蜥蜴が視界に現れた。
炎を纏う蜥蜴はあまりにも大きく、熱い。水蒸気による爆発をものともしないその姿は異彩を放っていた。
「サラマンダー……ついにSランクが来たか」
Sランクのスタンピートならあのサラマンダーがボスなのだが、これはSSランクスタンピート。
あいつを倒したところでまだあと2体はSランクが出てくるだろうし、その後にはSSランクの化け物も控えている。
Sランク同士の戦闘が長引けば、その余波で味方や防壁にダメージを与えることもあるかもしれない。
つまり、こいつ1体に時間を使っている暇はないということだ。
「エメラルドウルフ! バフを寄こせ!」
【水龍の翼】【大水妖の右腕】【雪男の左腕】【氷雪馬の脚】
エメラルドウルフ達にバフを要請し、4種の魔物に化けた俺はサラマンダーへ向けて飛び出した。
雪男の能力で雪を降らし、氷雪馬の脚からは氷が広がっていく。この程度の小細工、すぐに炎によって蒸発させられてしまうが問題ない。
大量の氷、水、雪が蒸発の際に周囲の熱を奪って行き、サラマンダーの炎を弱らせた。
「グラァァァァァァァァ!」
そのことが機嫌を損ねたのか、サラマンダーは怒り発狂し、大炎を纏って突進を仕掛けてくる。
避けることも可能だが、俺が避けてしまっては防壁に被害がいってしまう。そこまで考えての行動だとしたら、流石はSランクだと言えよう。魔物の癖に、意外と冷静で頭も使える。
これは……アレを使わないとやばそうだな。エメラルドウルフから複数のバフを受けているとはいえ、Sランクとの正面衝突は厳しいものがある。
俺自体、未だにSランクの討伐経験がないせいでSランクの魔物には変化できないからだ。
アイテムボックスから【禁断の魔剤】を取り出し、魔物化している部位に液体をかけた。
両腕は体積を膨らませ、氷雪馬の脚は氷の鎧に覆われ、水龍の翼は4枚に増加し、その大きさや一枚の厚さも強化された。
使うのは検証依頼だが、確かな増強効果である。頭は魔物化していないので、知能が低下している感じもしない。よし、いけるぞ。
右腕には激流を、左腕には冬を宿し、強靭なる脚と翼で推進力を得て、正面からサラマンダーと激突した。
バァァァァン!
またも水蒸気爆発が起こるが、強靭な翼に守られし今の俺にそんなものは通用しない!
大量の蒸発により熱が奪われ、炎が弱まった瞬間。すかさず巨大な翼でサラマンダーを拘束し、大量の水を生成して溺死させた。
【水龍】
「グオォォォォォォォォォォォォ!」
咆哮し、勝利を告げる。すると、防壁側からも大気を震わすような雄叫びが上がった。
よし、士気の維持にも貢献できたようで何よりだ。
しかし、魔物達は余韻に浸る暇も与えてくれないようである。
次の瞬間、風と雷の権化。風鬼と雷鬼による襲撃を受けた。
あとがき
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