第87話 山と住居

 知らぬ間に従魔になっていたとはいえ、この子達はもう俺の仲間だ。


 契約解除して逃すなどの手もあるが、懐かれてしまった以上は住みやすい環境を整え、一緒に暮らす義務があると思う。


 というわけで、街から少し行ったところにある山を購入した。かなり高額な買い物だったが、後悔はしていない。


 この先、街中にある家に帰ることは少なくなると思うが、一応売らずにそのままにしておいた。何があるかわからないからな。


「ほら、着いたよ。ここが俺たちの庭だ。」


 狼達を引き連れ、つい先程俺の物となった山に到着した。


 俺が山の購入手続きをしている間、狼達はダンジョンの外で待機させていたので退屈していたのだろう。山に着いた途端、各々遊び始めた。


 近くで寝転がったり俺の足に絡みついて甘えてくる子もいれば、仲間同士で喧嘩する子や、木に体当たりを仕掛けるアグレッシブな子まで様々だ。


 山の奥へ駆けていく子達も多かったので「あんまり遠くに行くなよー!」と声をかけて見送った。あまり遠くに行かれると探すのが大変だからな。


 狼ということもあり、集団行動や連携が得意なはずだ。森に存在する生物のことはまだわかっていないが、あの数で一緒にいるなら万が一の事はは起こり得ないだろう。


 問題は狼達が人に攻撃されてしまうことだが、懐柔契約を結んだ証として、体のどこかに緑の布が結ばれている筈だ。ちなみに、強制契約だと赤い布が結ばれる。


 ちらっと足元にいる銀狼を見てみると、しっかりと前足に緑の布が結ばれていた。


 彼らは体が鉱石でできているので、緑の布も目立ってわかりやすい。人の従魔だとわかれば、攻撃してくるような事態にはならない筈だ。


 さて、甘えてくる狼達を一通り撫で回したので、そろそろ簡易住居を作ってしまおう。


 簡易住居と言うだけあって、本当に簡単なものにするつもりだ。具体的に言うと、洞穴住居にしようと考えている。


 本当はもっとちゃんとした住居に住まわせてあげたいのだが、この人数を考えれば普通の家を建てるのは時間がかかるし、二階建て以上にすると床が抜けて大惨事になる未来しか見えない。


 やはり、当分の間は洞窟住居に住むことにする。


【土龍】


 土龍で土や岩を操り、洞窟を作っていく。天井や壁を補強するのも忘れずに。


 ある程度の広さが確保できたら、床に魔物の柔らかい毛を敷き、その上から皮を敷いて簡単にベッドを作る。


 試しに寝っ転がってみたが、フカフカしていてまあまあの寝心地だった。うん、なかなかいいんじゃないか?


 しかし、狼達何体かに寝っ転がってもらうと、ズシンと沈み混んでしまった。


 毛の量を増やし、再チャレンジ……よし、今度は平気そうだな。照明は魔法でいいし……料理は外でやるとして……よし、ひとまずこれで住居は完成だ。


 

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