第86話 懐柔と強制
「困ったなぁ……これからどうしよ」
攻略した鉄のダンジョンの前にて、大量の狼達に囲まれながら頭を抱えていた。
上位狼になりすまし、合計340体の狼達を従えていたわけだが、まさかここまで懐かれるとは……。
ダンジョンを攻略すると、攻略者は強制的にダンジョンの外に転移させられる。じゃあ、攻略者の従えている魔物はどうなるのか。それはもちろん、攻略者と一緒に転移させられるのである。
これは、一般的に知られているダンジョンのシステムであり、もちろん俺も把握していた。
しかし、まさか340体全員が、俺の使役魔物になっているのは流石に予想外だった。
上位種だというだけの理由で従っていただけであり、正式に従魔契約を結んだ訳ではない。殆どの子が嫌々従っていたと考えていたのだが……まさか全員が俺に従ってダンジョンの外までついてくるとは。
本来、魔物を契約するには2つの手段がある。1つ目は、スキルを使った強制契約。
強制契約は、魔物の意思とは関係なしに契約をすることができる。そのため、力でねじ伏せてしまえば必ず契約ができる点がメリットとして挙げられる。
デメリットとしては、魔物が指示通りの行動を取ってくれない場合があること、自分より強い魔物使いに従魔を奪われてしまうことなどが挙げられる。
今回、俺はほぼ強制契約のような手段を用いて、狼達を従えた。なので、途中で上位種の銀狼に出会ってしまい、鉄狼が寝返るという珍事件が発生した訳だ。
そして、魔物を従えるもう一つの手段として、懐柔契約という手法がある。魔物との絆を深め、魔物自ら「この人と一緒にいたい!」「この人に仕えたい!」と思わせることで契約が成立する。
懐柔契約のメリットとして、魔物がほぼ必ず指示通りに動くということや、強制契約のように魔物を奪われることがないなどがあり、他にも多くのメリットが存在する。
デメリットは、契約を結びにくい点と、魔物が嫌がることは指示できないという点だ。
これらを見ていただいたら分かると思うが、基本的に魔物を従える際は懐柔契約が推奨されている。
さて、本題に戻ろう。今回、俺は上位種という立場を利用してこの子達を従えていた筈だったのだが、いつのまにか懐柔契約が成立していたのだ。それも、340体全員と。
「おかしくない? 普通、そんなことあるかなぁ……」
『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『前代未聞すぎてwwwwwwwwwwwwwww』
『まあ、狼達の気持ちもわかるよ』
『んね、あんなに大切に扱われたら、ついて行きたくなっちゃう気持ちもわかる気がする』
『懐柔しようとして優しくしてた訳でもないから、それもポイント高かったのかもね』
『あー、確かに。狼達からすると、無償の愛を注いでくれたご主人様ぁ! って感じなのかな?w』
『ヴァリアン、最後の方とか結構可愛がってたもんね』
『転移する直前、悲しそうな顔してたもん。たぶん』
『顔見えねえだろwwwwwwwwwwwww』
『でも、言いたいことわかるわ。最後まで目に焼き付けようとして、1分くらい瞬きしてなかったもん。この人』
『しかし、こいつらどこで飼うんだ?ww』
『あっ……(察し)』
『だから頭抱えてるんか』
『なるほど、飼い主視点になってみるとかなりやばい状況だな』
『家に上げたら重すぎてぶっ壊れそう』
『エサも何食うのかわからんしなwww』
コメント欄は、大変大盛り上がりである。
今後もこいつらと一緒にいられるということは嬉しいし、俺も盛り上がりたいのだが……厳しい現実が脳内をよぎる。
こんな大量な魔物を街中に連れて行ける訳ないし……どうしよう。
あとがき
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