第75話 おじさんの物語と事故物件
土下座しているおじさんこと商会長を正気に戻し、会話することに成功した。
この人の娘を救うのに貢献したのは確かだが、客人を土下座で迎えるとは頭の狂ったおじさんである。
そんな狂ったおじさんの狂ったような感謝の嵐が終わると、今度は娘を助けるために手を尽くしたおじさんの物語をひたすらに聞かされることとなった。
全てを伝えるのは面倒だし面白くもないので、簡単にまとめさせてもらう。
怪林病を患った娘を助けるべく、商会長としてのツテをフル活用し、苦労の末になんとか毒龍の血を手に入れたらしい。
しかし、貴族から圧力をかけられて毒龍の血を奪われてしまったそうだ。
抵抗することも考えたが、抵抗した末に被害に遭うのは自分たちだけでなく、従業員たちもだということに気がつき、思いとどまったそうだ。
そして、たくさんの従業員と娘を天秤にかけた末、娘からの後押しもあり毒龍の血を手放してしまったらしい。
そして、絶望の淵にいたところに俺の情報が届いたらしい。そのため、大変感謝していると。
さて、1分ほどで説明できてしまうこのエピソードであるが、このおじさんは無駄な話も付け加えて1時間近く語っていた。
こいつ、本当に感謝しているのか?これ、新手の嫌がらせだろ?という疑問が出てきてしまいそうなところだが、彼らの境遇を思い出し、心に呑み込むことにした。
ただ、こちらも感謝はしている。謝礼を渡そうとしてきたので断ったところ、王都にある一軒家を安値で貸してくれることになったのだ。
そして今、その家を浄化しているところである。そう、貸してもらった家はまたも幽霊付きの事故物件なのだ。
彼が提供してきた家がこの事故物件だとしたら、先ほど心に飲み込んだ疑問が確信に変わるところであったが、安心して欲しい。ここは、俺が自ら選んだ物件だ。
どうせ誰も住めないのなら、俺が浄化して使ってやったほうが家も報われるだろうと考えたのだ。動画のネタができるからとか、そういう汚い大人の事情ではないと言っておきたいところである。
さて、だいぶキレイになったな。表彰式まであと3日。短い間ではあるが、王都を堪能しようではないか。
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