第68話 救いのメッセージと移動方法
湯船に浸かって身体は癒されたわけだが、心に秘めた心配は未だ解決できていない。
いくつか心配事はあるが、人間だと言うことがバレてしまうのが1番恐ろしい。人気が下がるのも嫌だが、それならまだマシな方だろう。
最悪、この命を散らすことになるかもしれない。戦闘能力に自信はあるが、王を守る高ランクの相手数名に叶うとは思えない。
例えその場を運良くくぐり抜けたとしても、全世界にその状況がバレてしまっているわけだしな。世界が相手とは、流石に逃げ切れる自信はないぞ。
だからといって、仮面をつけて王の前に行けるわけもないだろうしなぁ。
この問題を解決しなくては、俺に休息は訪れない。魔族に変装するための変装道具をショップで漁ったり、魔族に擬態できる魔物がいないか探してみたりと、必死に解決策を模索していた。
色々と試行錯誤し、諦めの気持ちが心に浮かんできた頃。無機質な女神の声が脳内に響き渡った。
『【トレランス王国 国王様の使い】からメッセージが届きました』
「あぁ、やっときた! 国からのメッセージ!」
ついに、待ち望んだ国からのメッセージが届いたのだ。いつもは無愛想に感じる通知音声の女性の声が、今では女神のように、救いを与える天使の声のように感じた。
しっかりとメッセージを送ってきたアカウントの詳細を確認し、国王公認の使いだということを確認できた。
しかし、安心するのはまだ早いよな。本当に俺の話を聞いてもらえるかもわからないし、ただの一方的な招集メッセージかもしれない。気を引き締めて臨むぞ。
♢♢♢♢♢♢
結果から言う。あれからいくつかメッセージを交わし、すべての疑問や不安を解消することができた。
日時は2週間後の午後3時から。どうやら表彰を受けるのは俺だけでなく、別件で活躍した者も表彰されるらしい。なので、日時の変更が出来ないことを謝罪された。
別に予定も入っていないし、こちらとしては話を聞いてもらえるだけでありがたいのだ。謝罪を受け取り、しっかりと感謝のメッセージを送っておいた。
それから、場所は王都の王城にて行われるらしい。これはなんとなく予想できていたが、城に入るのかぁ。実感湧かないな。
まあ、表彰が終わったらささっと城から追い出されることだろう。むしろ、城内の光景を楽しんでやろうと、強気で臨むことを決意した。
どうやら、王都に到着た後、滞在している場所をメッセージで伝えておけば、当日に迎えを寄越してくれるとのことだ。なんて親切。これにも、感謝のメッセージを送っておいた。
それから、最大の心配であった人間バレのことだが、顔出しはしなくてもいいとのことだった。一応確認を取ったが、ゴブリンの仮面をつけたまま来ても平気だと言う。
つまり、いつも通りの格好で気楽に行けることになったのだ。それなら、いつの間にやら着なくなった魔鉱石の鎧も来ていこうかな。
……いや、やっぱりやめておこう。趣味悪すぎるし。流石に顔を隠していれば、他は見られても問題ないだろう。隠れた顔のどこかに魔族の特徴があると勘違いしてもらえるはずだ。
全ての悩みが解決したわけだが、やることがないわけでもない。やることは2つあり、1つは表彰の際の作法を身につけること。
この作法については、先ほどメッセージで教えてもらっているので、後は練習して身につけるだけである。これは、時間が解決してくれるだろう。
もう1つは、王都への移動手段を決定することだ。俺が今いる魔法都市から王都までは割と遠く、数字にして300kmほど離れているらしい。
300kmといえば、相席馬車で行こうとすると6日程かかるくらいの距離だ。本来なら3日ほどで着く距離だろうが、魔物の脅威があるのでそう早くは着くことができない。
その魔物の脅威から乗客を守るのが、護衛依頼を受けた冒険者の役目である。そう、冒険者であれば、依頼を受けて報酬をもらいながらも、様々な場所まで移動できるのだ。
報酬が出ると言うのはとても魅力的であるし、護衛にも自信はあるので問題はない。しかし、俺からすれば無駄に時間がかかる上に、報酬も大したことがなかったら受けるメリットがないんだよな。
いい依頼がなければ、魔物に変化してささっと王都まで行ってしまうことにするか。うん、そうしよう。
早速冒険者ギルドまで移動し、王都までの護衛依頼を確認してみるも、特に惹かれるものはなかった。やはり、待遇も賃金もあまり良くはないな。
ということで、ドラゴンにでも変化して王都まで飛んでいくことにしよう。楽ちんだし、それでいいよな。
あとがき
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