第59話 不足と周回

 翌日。俺は再び、毒のダンジョンへ来ていた。今日は配信はしていない。


 ここへ来ている理由だが、毒龍の血を集めるためである。

 

 メンバー制度の特典として20L、100人分に値する量の毒龍の血をつけたわけだが、どうやらそれでは全然足りなかったようだ。


 滅多にかからない病気だと聞いていたので、100人分もあれば十分だろうと油断していた。


 あのとき、50000人も視聴者が来ていたのも、ほとんどが野次馬だと思っていたんだがな。まさか10000人分も毒龍の血が必要だったなんて。


 まあ、この配信も全魔界の人が見れるわけだし、その規模で人が集まってきたんだから、100人分で足りるわけがないよな。


「はぁ……」


 そもそも、10000人分も足りないと気づいたのは『毒龍の血、全然足りてないみたいだよ』というメッセージが、メンバーの方から届いたからだった。


 それを見てコメント欄を見てみると、毒龍の血が欲しいという人で溢れかえっていたんだよな。


 驚きはしたが、一旦具体的に何人分必要なのか知る必要があると思い、『毒龍の血が必要な方はこの投稿にグッドボタンお願いします!』という投稿をしてみた。


 すると、1万件のいいねが届いてしまったんだよな。


 どうやら、あの後も俺の存在が広まり、怪林病の治療薬を求める人たちがさらに集まってきたらしい。


 それから、安値で毒龍の素材が手に入るということで、必要のない人もやはり買っていく人がいるみたいだ。


 しかし、治療薬のために必要な人とそうでない人の見分けなんてこちらからは付かないので、いいねがついた分毒龍の血を持ってくるしかないんだよな。


 だが、流行り病などでないだけマシだよな。100万人の治療薬が必要だ。なんてことになったら、10000回も毒龍を倒すハメになっていたんだ。想像するだけでも震えるよ。


 不幸中の幸いというべきか、今回は10000人分なので、毒龍を100回倒せば済む。それも、1回倒すたびに300万の収入が確定している。


 それに加え、かなりのファン数を獲得することができるだろう。


 たとえ、メンバーになってくれた10000人全員がメンバーを解約し、ファン登録を外したとしてもこちらにはメリットがある。


 1度でもメンバーになってくれれば、たとえ解約されたとしてもファン0.2人分として扱われるのだ。なので、10000×0.2で2000人のファンが増加するのは確定している。


 こちらにも徳しかない話なんだから、そりゃ必死こいて100回くらい周回するよな。


 


 


 


 

 

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