最強?勇者?陰の支配者?何言ってんの唯の料理好きな一般人です。

しず。

第1話-プロローグ編-

目を覚まして、彼は開口1番に呟いた。


『お腹空いた…』と。


それが決して悪いわけではない。悪いわけではない…のだが、場にはあまりにも不釣り合いで場違いとも言えた。



何故なら彼が爆睡して起きた場所は自室ではなく。


昨日から潜伏、いや狩り場としているダンジョンの最下層でガチ寝しただけでなく。危機すら考慮していない寝袋を使用していたからだ。


なんならつい先程まで、顔の半分までファスナーを上げていて。二度寝する勢いである



が、しかし。どんなに睡眠欲求に駆られても


負けない。いや…むしろずっと主張し続ける欲求の方が重大性を余裕で上回る。それは、



『寝て起きたらご馳走が一杯転がってるなんて最高すぎる!』


睡眠よりも大切なもの。それは食事である。ただし、彼の場合は。と前置きが必要だ。




彼の場合食に対する執着は異常だ、と誰しもが口を揃えることだろう




身体に良いと言われる薬草(断崖絶壁にある草)でも、舐めたら頬がとろける砂(スカルトンの骨をすり潰したもの)など幅広く。


手には入りにくいと言われている食材でも、手に入れる男。



それが、ユナトであった。


戦いの中でも、火事場でも。はたまた海の中にある食料さえ躊躇う事なく飛び込んでいく様は気狂い


いや、勇敢なる戦士…と言われている。




『えーっと、…スライムが5体と、ウルフ1体とボアが2体かぁ!うんうん、いいじゃん。朝から豪華だなぁ』


寝袋からいそいそと這い出た男、ユナトは満面の笑みで食糧達を眺めて想いを馳せる。



勿論、死んだ動物・魔物たちを眺めながらどのように調理するかを思考しているだけなのだが、




色づく頬や、愛おしそうに笑む姿は


さながら誰かに思いを寄せている男にしか見えないのはここだけの話である。

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