夢日記
@_r1ngo_
変身
何故斯様に無慈悲な事が出来るのだろうか。例えあの血と膿の匂いの充満する部屋に戻る事になろうと、彼女の最後の言葉と銃声を鼓膜に焼きつけたまま生きていく事よりはよい事の様に思えた。
私のこの能力が世間に露呈したばかりの頃は、今の研究とは名ばかりの拷問の続く日々ではなかった筈だ。当時は新任の研究者だった彼も、今ではこの研究所の所長として彼女の頭に銃を突き立てている。まさか研究所から逃げ出した私を説得する為に人質まで使うとは。それも死ぬ事すら許されない拷問の日々を支えてくれた彼女を。私の能力を使えば屋上から海へ飛び降りて、そのままどこへだって行ける。しかし彼女がいなければ生きていく事は出来ないだろう、と頭で考えるよりも先に私は屋上の縁から足を踏み下ろしていた。
諦めて階段の方へ歩き出した瞬間、彼女は銃を振り払い屋上の端へ走り始めた。所長が慌てて放った弾丸は彼女の左手を掠めたが、彼女の足は止まらずにそのまま飛び降りてしまった。理解が追い付かず少し呆然とした後、慌てて海を見下ろしたが彼女は既に見当たらず、海の藻屑となってしまった様だった。彼女がこの研究に加担している事に罪悪感を抱えている事は知っていたが、それがこの様な形になってしまうとは。
放心している私の前に、左の翼を怪我しているツバメが留まった。一縷の希望が脳裏をよぎる。ツバメは海へ向かって飛び、着水と同時にイルカになった。まさか彼女も私と同じ能力を持っていたとは!私は急いで飛び降りた。
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