中旬
港のすぐ近く、パスタがウリのチェーン店。その隅っこのボックス席で我らが母艦【ぶんご】と向かい合う。
「豊和、それ何皿目?」
「んー、三皿目かな。ゆげはおかわりしないの?」
「俺はもう腹いっぱい」
「そっか」
くるくるとフォークで残りの麺を巻きとりながら【ぶんご】……豊和の方を見る。豊和はというと手を止めじっと俺の手元を見ていた。
「豊和、食べないの?」
「いや、お前らってあっという間だなと思って……ゆげが居なくなったら皆俺より年下になる」
聞けば豊和は拗ねたように口を尖らせながらそう答えた。体格や年齢に見合わない幼い仕草はこの【艦霊】が自分たちよりも長く海の上で過ごすことを表しているようで、ほんの少しうらやましく感じる。
「【うらが】がいるだろ」
「【うらが】は【うらが】。【掃海艇】は【掃海艇】。違うんだよ」
ちょっと背を丸めて上目遣いで俺の様子を窺う豊和。さすが甘え上手というべきか、なかなかにあざとい顔をする。
「そうか、ぶんぶんは寂しいんだな」
「多分ね」
「生まれてから二十年ちょっと一緒に机並べて、訓練して、同じ釜の飯食べて……特に機雷艦艇は家族みたいなもんだからな」
「お前らが鉄だったら良かったのに」
「FFMがもうすぐ来るから心配するな。実現するぞ」
「そうじゃないんだけどなあ」
苦笑いする豊和をスルーして最後の一口を食べる。すでに豊和はメニュー表を広げ次の皿を何にするか迷っているようだ。
「まだ食べるのか?」
「あと、ひと皿とピザとアイスで終わるよ」
「若いなあ」
俺の呟きを聞いて豊和が少し照れくさそうに笑った。
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