四月三十一日 2355
人間の様々な事情が入り混ざり、悲喜交々時々阿鼻叫喚のゴールデンウィーク。そのちょうど真ん中に当たる本日、【道】の一角では宴会が催されている。夕方から飲み食いを始めた祭り好きの【艦霊】たちは個人差はあれど皆、酒を飲み、煙草を吸い、歌を歌いまさに大騒ぎ。これが現世であったならば近隣住人からの非難を免れなかっただろう。
「あと五分!」
誰かが時計を見て大声でいう。
「ながー、あと五分だって」
「んー、あー、ほんとだ」
隣でチビチビと甘い酒を舐めるように飲んでいる弟、長哉に話しかけると、長哉は目を細めて笑う。 さらにその隣の【掃海母艦ぶんご】こと豊和(ゆたか)はコックリコックリと船を漕いでいる。
「おーい、豊和くーん、船漕いでる場合じゃないぞー、平成終わるぞー」
「あー?」
「お前ディーゼルだろー!」
豊和の髪をわしわしと撫で回すと迷惑そうに、払い除けられてしまった。
「ダメだ、こりゃ」
自分の座布団に戻りビールを喉に流し込んで、腕の時計を見る。時計の針は進み、平成はもう残りわずかとなっていた。
「2359(フタサンゴーキュー)」
【こんごう】が声を張上げる。先程まで大騒ぎしていた【艦霊】たちは皆口をつぐみ、それぞれの腕時計や壁に掛けられた時計を見つめた。
「五、四、三、二、一、じかーん」
「よっしゃー!!元号三つ目!!」
【こんごう】の号令がかかるや否や声をあげたのは【やまゆき】だった。豪快に笑う練習艦はそれはそれは嬉しそうに跳び跳ねる。
「【やまゆき】改元に滑り込みセーフ」
「弓哉、俺らもね」
「まあな。長哉、俺の命の終わる日にお前がどんな顔をするか楽しみだ」
「なにそれ?」
「ん?もうすぐだなーと思って」
「はあ……弓哉と一緒の顔してるよ」
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