第4話

「あっ…。」

麻衣は、咄嗟に声が出た。

少年の目をした、真一が、そこには立っていた。

「よっ、久しぶり!」

真一が、笑顔で言うと麻衣は少し恥ずかしそうに

「はぃ…」

と、また小さな声で答えた。

「ここ、いい?」

「どうぞ。」

麻衣は『いらっしゃいませ』を言うのをすっかり忘れてしまった。

この頃、真一は昔話や、家族の話をよくしていた。

それを、麻衣は感心するように聞いていた。

もちろん、ほんの少しの恋心は隠して…。

真一は、いつも、麻衣の料理を誉めた。

たまに帰ると、家で料理をするらしい。

高校生の兄妹が、お父さんの料理を食べたいと言うのだそうだ。真一はなぜか妻の事をほとんど語らない。

ごく稀に、電話が掛かってくる。仕事関係でないことはすぐにわかる。

真一は、滅多に帰らないというか、帰れない生活をしている。妻は、不安とか寂しいとかないのだろうか。

麻衣は不思議に思っていた。いや、そんなことはどうでもいい…。

麻衣は、どんどん真一に引き込まれていくのをこの時はまだ、気付いていなかった。






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