7話 魅力特化の有翼ヒーラー
『癒術師様! 大変助かりました! 少しだけ力が戻りました!』
ドンと痛快な効果音が響いて、目の前にクエストクリアのウィンドウが表示される。
『ぜひお礼をさせてください。……とは言っても、私に差し出せるのは樹木の種子くらいですが』
目の前で輝く燐光――切り株の精霊が種子を握った手を差し出した。
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パラサイトシード
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生物に寄生して成長する樹木の種子。
寄生対象のHPを吸い取る効果がある。
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おっそろしいアイテム持ってんね⁉
え、これわたしに寄生したりしない?
おお……慎重に取り扱おう。
『パラサイトシードは畑で育てると1~3個の種を落とします。ぜひ有効活用してくださいね』
「あ、待ってまだ聞きたいことが」
精霊は言いたいことだけ言うと姿を消してしまった。
AIくんは話し合いが下手だねぇ……。
「みんなどう思う? わたし的には、この精霊さん黒幕とかそういう立場だと思うんだけど」
・怪しい
・裏切りそう
・まともなNPCが報酬に出すアイテムじゃない
だよねえ。
寄生植物を渡してくるとか、世界征服を狙ってますって宣言しているように思えてならない。
倉庫にでも封印してしまうのが吉かな?
・俺がβ版プレイしたときと違う
・そもそもこんなに成長しなかった
・β版でこのクエスト達成した奴いなかったよな
・ヒール系統の上級スキルが必要なんじゃないかとか推測されてたけど、ヒールストームでもダメだったんだよな
「え、そうなの? あっさりクリア出来ちゃったけど。何か特別な条件がいるとかかな? いや思い当たる条件は無いんだけどさ」
・もしかして:魅力
・魅力なわけないだろ……! 無いよな?
・Charisma:ギリシャ語のカリス(恵み、恩寵)に由来する語
え、魅力って
・あれ? もしかしてワンチャンある……?
・ここにきて死にステータスの隠し仕様判明⁉
「ちょっと試してみましょうよ! どなたか魅力以外にステ振りしてるヒーラーはいませんか?」
・魅力に振ってるヒーラーなんてRenちゃんだけだよ
・ワイINT特化ヒーラー
「ワイくんちょっとフィールドの入口まで来てもらってもいい? あ、やっぱ来なくていいや。その辺の樹木から果実を採取して、種を植えてヒールかけてもらってもいい?」
・行きま……! あ、はい。承知しました
・ワイくんwwwどんまいwww
・男心を弄びやがって……! いいぞもっとやれ
・やっぱ来なくていいやで草
・俺も弄ばれたい
なんかちょくちょく真正のドMさんがいるな。
彼のことはえむくんと覚えよう。
「違うの! サービス開始直後でやりたいことそれぞれの中時間を割いてもらうのは悪いなって思っただけだから! ここにいるみんなのこと大好きだから!」
・笑いながら言うな
・でもかわいい
・言葉だけってわかってるのに、くやしい。嬉しい
言いながら、わたしは近くの果樹によって木の実を採取した。アイテムメニューからクラフトボタンを選択し、赤い木の実の種子4つに変換する。
・こちらINT特化ヒーラー。一応芽吹いたけど、発芽しただけ。ヒールを重ね掛けしても成長なし。
・ワイくんナイス
・おつかれさま!
「ワイくんありがとうね! 大好き!」
・ワイくん、プレイヤーネーム教えてくれる?
・あと今いる場所も
・ヤだよ。おまえらPKしに来る気満々じゃん
手の平返しがすごい。
まあ大体わたしのせいだけど。
「みんなヒールするよー? ちゃんと見ててね? 【ヒール】!」
クラフトで生成した種子を埋めた地面に向けてヒールを飛ばす。
すると地面がぼこりと盛り上がった。
かと思うと、そこから緑色の双葉が顔をのぞかせ、みるみるうちに立派な樹木へと成長していく。
・おおおお!
・樹木生える
・CHAの隠し効果が判明!
・これでCHAの立場が改善され、るか?
・正直微妙
・使い時無い
・生産職ならワンチャン……いやDEX捨ててまで伸ばす理由も無いか
「おおう、キミら魅力への当たり本当に強いよね」
まあ、それくらいの方がちょうどいいけど。
不遇だって言われてるくらいが絶妙な塩梅。
「いつか見返してやるからね! 覚悟しといて!」
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