同級生の美少女に『好き』と言ったらめちゃくちゃ可愛くなった。

@osho_yu

第1話 好きです!付き合ってください!

 俺には好きな人がいる。

そう自覚してから、早半年が経った。



 もう一度言うが、俺には好きな人がいる。相手は頭脳明晰、運動神経抜群、さらには才色兼備の、学校一と言っても過言ではない美少女だ。

 そんな彼女に、俺は一目惚れした。



 俺と彼女はこれまで一度も話した事はない。なんなら同じクラスでもない。それでも彼女の噂は違うクラスにまで届くほど、学校全体に広がっていた。

 それほどまでに整った顔立ちと驕らない性格をしており、多くの男子生徒が想いを寄せていた。

 俺もまたその内の1人だ。




「よし!告白しよう!」



 そう決心が出来たのは、俺が彼女に一目惚れをしてから半年以上が経過した、文化祭の前日の事だった。



 これまでも沢山の男達が彼女に告白したが、結果はことごとく失敗に終わっている。俺だって成功するとは思っていないし、接点すらないのだから可能性があるとは思えない。



 しかし、想い続けるだけではいつまで経っても何も変わらないので、失敗してでも行動に移すべきだろう。

 その結論に至り、いよいよ文化祭当日を迎えた。




「いつ告白すればいいんだ……」



 俺はクラス出し物であるお化け屋敷のお化けの係をしながらも、そんな事を考えていた。

 決心したのが昨日、行動に移そうとしているのが今日。ただでさえ接点がないのに、きちんと告白するまでの手順なんて思い付いていなかった。



 そもそも告白なんてした事ないので、どう呼び出してどう想いを伝えるかなんて分かるはずもない。友人にでも聞いてみれば良かったが、そんな時間もなかったし、何より自分から聞くのは中々に気恥ずかしかった。




「月城くん、役代わろうか?」



 俺がそんな事を考えてしばらくしていれば、同じクラスの女子がそう声を掛けてきた。やけにニッコリと微笑みながら。




「え?まだ昼休憩じゃないと思うけど」

「うんまだだよ。でも月城くんは明日も役入ってるでしょ?私は明日は役入ってないから、その分今日は早くからやろうかなって」



 正直に言って、その提案は俺からすればとてもありがたかった。




「俺はありがたいけど、いいの?」

「うん!クラスの文化祭だもん!1人に任せるわけにはいかないよ!」


  

 そんな事を言われたら、俺に断る理由は見当たらなかった。クラスで一致団結して行う文化祭、その事を強く意識しているクラスメイトに感謝しながらも、俺はその提案を受けることにした。

 



「ならお言葉に甘えさせてもらうわ。ありがと」

「こちらこそありがと!明日も頑張ってね!」

「はーい」



 ずっと笑顔を浮かべているクラスメイトに手を振り返しながらも、俺はその場を立ち去った。




(てかさっきの子、文化祭前の準備とか全然手伝ってなかった気が)



 お化け屋敷の場所から少し離れた更衣室で衣装から制服に着替えた俺は、ふとそんな事を思い出した。そして同時に嫌な予感がした。


 

 今思えば、俺が係を交代する前にもすでに何人かが係を代わっていた。



 第一に文化祭の準備に乗り気じゃなかった子が、今日になって急にやる気を出すはずがない。

 まさか薄暗いお化け屋敷を利用して何か企んでいるのだろうか。昼時の生徒の出入りが少ない時間を狙って、何かしようとしているのか。

 


 俺はそれが気になって、再びお化け屋敷会場へと戻った。




「離して……!」



 やはりお化け屋敷の場所に人は集まっておらず、中からは悲鳴のような声も聞こえてきていた。




「本当にいいのか?」

「いいよ」

「へっ!お前も悪い女だな!」

「だってムカつくのよ。ちょっと顔がいいからって男にチヤホヤされてるのが!」



 受け付けに人はおらず、入口の前には『修理中』の文字が書かれた立て掛けが置かれていた。俺はそれをどかして中に入り、声のする方へと急いだ。




「てかコイツがチクったらどうすんだ?」

「チクれないように色々としてあげないとね!」

「つくづく悪い奴。自分の男取られたのがそんなにショックだったのかよ」

「うっせ。それも全てこの女が悪いのよ!」



 足の回転を速めれば、次第に聞こえてくる声は大きくなっていく。お化け屋敷の中はぶら下がってある装飾品や展示なんかが多いので、それを崩さぬように、避けながら進む。



 いよいよ声の発信源は近くなってきて、人影も見えてきた。




「何してるんだ……?」



 俺がそう言葉を溢せば、さっき係を代わった女子生徒に、その前に代わった係の人達が一斉に後ろを向いた。

 すでに周辺の展示やらは崩れており、もう午後からお化け屋敷を開くのは無理そうなレベルである。




「月城……くん?何でここに?」

「おい何でコイツが来たんだよ」

「いや私に聞かれても……」


 

 まさか俺が来るのは予想外だったのか、あたふたと慌ただしく瞳を泳がしている。ここまでの反応を見せているのだから、もう言い訳は不要だろう。



 俺は今からこの現状を証拠として残しておくために、ポケットに入れたスマホを取り出した。




(この子は……)



 スマホのレンズを通して近くを写真に残していれば、ここに入る前に聞こえた悲鳴の持ち主と思われる女子生徒がカメラに映った。



 俺の中の呆れや驚きといった感情が怒りに変わったのは、すぐ側に膝をついているその少女を見たからだった。

 俺が片想いをしている、その少女を。




「てかさ、コイツをボコボコにすれば何もバレないよね?」

「そ、そうだ。写真も後から消させればいいし、なんなら責任を擦りつけるのも……!」



 危機的な状況にいる人間は、何をしだすか分からないから怖い。俺は悪意しかない視線を感じながらも、膝をついている少女の元に駆け寄った。




「早く逃げよう!」

「貴方は…………」

「今はそんな事はどうでもいいから!」



 俺は少女の手を取り、その場から走って逃げ去った。今更展示や装飾品を避けて走っているわけにはいかず、それらを一切意識せずに、ただ真っ直ぐ逃げる。



 息切れの音、それが激しく横から聞こえるのに気づいたので、手を掴んだまま走る少女の顔を見た。少女の瞳には涙が浮かんでおり、それが俺の中の保護欲を掻き乱した。




「…………好きだ!付き合ってくれ!」

「え、?、、、あ、、は、はい!」



 きっと彼女はパニックになっていたのだろう。だから俺の告白に了承の返事をしてしまったのだ。

それでも、彼女の顔には少しだけ明るみが戻っていた。

 






>あとがき<



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