【る〜ず・り〜ふ】三番目にモテる美少女の秘密〜可愛いだけじゃ許されない〜

あゆう

第1話 「さいってー」

 俺、瀬乃せの 一輝かずきのクラスには人気のある女子が三人いる。


 一番人気の女子は見た目もスタイルもごく普通の子。だけど人懐こくて元気な子。「あ、この子なら頑張ればいけるんじゃないか?」という距離感が人気の理由だ。しかし頑張ったくらいで付き合える訳がない。馬鹿か。


 二番人気の子は小柄な子。小動物みたい。飼いたい。儚い。って意見が多数。隠れ巨乳か? って言われているけど体育の時間はジャージのチャックを上まで閉めているから真偽は不明。俺、気になります!


 そして、三番人気の子が俺の前の席に座る須賀すが莉奈りな。美人だけど可愛さもあり、背が他の女子よりも高いこともあって少し近寄り難いクール雰囲気を醸し出している。そのせいもあって他の二人はみんなに好かれるタイプなのに、コイツの場合は好き嫌いの好みが別れるタイプ。それ故の三番人気だ。俺も苦手。


 ちなみに俺は二番人気推し。しかしロリではない。ロリではないのだ。



 そして今日も俺は目の前の須賀莉奈の尻を時折眺めながら右手にはペンを、左手にはスマホを持ち、それを机の下に隠してゲームをしながら授業を受けていた。


(やべ、スタミナ切れそうじゃねえか。回復回復っと)


 俺がやっているのは周回イベント。しかもオンラインで他のプレイヤーと一緒に進めているので、ここでスタミナが切れると迷惑がかかってしまう。だからすかさず回復アイテムを使用した。その時──


 プゥ


(っ!? 回復音が漏れたか!? ……いや、ちゃんとマナーモードになってるな。それに回復音はこんな屁みたいな音じゃない。ということは……)


 ゆっくりと顔を上げると横から視線を感じる。恐る恐る首を横に向けると、そこにはドン引きした顔の女子A。明らかに俺が屁をこいたと思っている顔だ。心外だ。冤罪だ。弁護士を呼んでくれ。


(マズイ。マズイぞこれは。このままでは天然ガスメタンクと呼ばれてしまう。我が家はオール電化だ。そんなあだ名は認められん。しかしどうすれば? 変に違うと言えば言い訳してるように思われかねない。ここは知らないフリが一番か。うん、それしかないな)


 そう思って知らぬ存ぜぬを貫こうとした時だ。


 プ……スゥ〜〜


(んなぁっ!!?? 二発目だとぅ!?)


 そして更に俺に集まる視線。今度は斜め前にいる女子Bからだ。いけない。このままでは仲間を呼ばれてしまう。ましてや目の前にいる人気第三位の須賀にもそんな目で見られてしまえば、俺へのクラス女子内での評価が大暴落だ。それだけは避けなくては。と、そこまで考えたところで違和感に気づいた。


(あれ? でも待てよ? 横と斜め前の子に聞こえてるのならば、目の前の須賀にも聞こえているはず。なのに何故、なにも反応がないんだ?)


 そう思って目の前の須賀を見てみると──


(こ、こいつ! 耳まで真っ赤にしながら小刻みに震えてやがる! もしかして屁こいたの須賀か!)


 俺がその結論にたどり着いた時、俺の斜め前後ろの男子Dがボソッと呟いた。


「誰かオナラした?」


 と。


 ガタッ!


 その呟きに反応したかのように須賀の方から物音が聞こえた。


(ビンゴだ。謎は解けた。屁をこいたのは須賀だ。そしてそれを知らないフリして人のせいにしようとしている。きっと、【美少女が授業中にオナラをするわけが無い】という思い込みを利用した完全犯罪だ。しかし俺はそれを許さない。可愛いからといって庇ってもらえてなんでも許されるとは思うなよ!)


 俺は周りから見て不自然じゃ無い程度に須賀に近づき、須賀にしか聞こえない声で告げた。


を出したな?」

「〜〜〜〜っ!!!」

「おわっ!」


 すると須賀は突然立ち上がり、真っ赤な顔で俺を睨んできた。耳だけではなく首まで真っ赤に染まり、肩を震わせ、涙目になりながら口をパクパクさせた後に出てきた言葉。


「…………ばかっ!」


 そう言って須賀は廊下へと出ていってしまった。


(ふぅ。これで俺が罪にとわれることはないだろう)


 そう思ったのも束の間。周りに座っていた女子ABCが俺を睨んでくる。まだ疑われているのも心外なので俺は微笑みながら答えてやった。


「俺じゃないよ?」


 なのに!


「「「さいってー」」」


 だってさ。……何故だ。


「瀬乃くん? 授業終わったら放課後職員室に来てね?」


 今度は担任からもそう言われた。何故だ!?

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