第36話 商業ギルドに登録

 そして、今日は訓練を行わずに町に出る事になった。先ずは冒険者ギルドに報酬を受け取りに行く。

 アイリーンさんが後依頼ごいらいで処理してくれた件の報酬は、何と金貨百枚だった。いや、多すぎでしょ。俺はセダンさんとユリアさんに渡そうとしたけれど、セダンさんは


「僕達は馬車の中で何もしてなかったし、それにナゾウくん、ミナさん宛になってるから、二人が貰っておくべきだよ。アラン様には直接アイリーン様がお渡ししてたから、気にしなくていいからね」


 そう言って受け取ってくれなかった。


「フフフ、新婚さんなんだから、お祝いだと思って受け取っておきなさい」


 ユリアさんにもそう言われて有難うございますと言ってミナの収納に入れておいた。


 そしてギルドを出ようとした時に受付のオネエさんから声をかけられた。


「アラ〜、ちょっと待ってね〜。二人には辺境伯様から推薦状が出ているわ〜。特級への推薦状だわ〜。受ける、受けないの確認が必要なんだけど、どうする〜?」


 シナを作って俺にそう聞いてくるオネエさん。俺とミナは顔を見合わせてからセダンさんに聞いた。


「えっと、推薦状って何ですか? それに受ける受けないって?」


 しかし、そこでオネエさんからドスの効いた声で抗議された。


「オイコラ、兄ちゃん! 質問があるならギルド職員である俺に聞くのが筋じゃあないかっ!?」


 突然の変貌に驚いたけど言ってる事は間違ってないから素直に俺は謝った。


「そうでしたね、スミマセン。教えてもらえますか?」


 俺が素直にそう聞くと、オネエさんは怒りをお鎮めになられたようだ。


「あら〜、やだ〜、私ったらゴメンナサイね〜。曲がった事が大嫌いたからツイツイ。でも、お兄さんは男前の上に素直に非を認めて謝ってくれたから、許してあ・げ・る!」


 いや、ウィンクしながら言われても俺にその趣味はないですからね。見た目は完璧な女性だが、確りと出た喉仏とその声で男性だとハッキリ分ってますから。俺は内心でそう思いながらもお願いしますと頭を下げた。


「特級になるにはそれなりの依頼をこなす必要があるのだけど、お二人は既に隣国でゴールデンボタンボアの進行から村を救ったのよね。それと、今回の辺境伯様のご子息をモンスターから救助したから、条件はそろってるわ。そこで、次に必要なのが推薦状になるの。それはギルドマスターや、各貴族様、はたまた、王族からなんかが有効で、勿論、救った村や町の長からでもいいんだけど、身分の高い人からだと審査も通りやすいわね。けれども、やはり本人の意志が大事だとする冒険者ギルドの方針で、推薦状が出た場合には本人に意思確認をする事になってるのよ」


 そこまで一気に説明されて俺も頭の中で内容を確認していたらミナがオネエさんに質問した。


「その本人の意思って、推薦状を出す事を受けるのか、それとも特級になる事を受けるのかのどちらなんですか?」


「あら、お兄さんよりもお姉さんの方が頭の回転が早いようね。この場合の受ける受けないの確認は推薦状をギルドの中央に送って審査対象になってもいいかっていう確認なの」


 うん、ミナの方が賢いのは確かだから俺は否定はしないぞ。


「審査対象になったら何か不都合があるんでしょうか?」


「そうねぇ…… 先ずは詳細な身元調査をされるでしょ、それにあなた達二人の能力は全て隠すことなくギルド中央で調べる事になるわね。特に二人は短期間で高級冒険者の最高峰になったから、徹底的に調べられるかも知れないわ〜」


 うん、止めよう。俺はミナの顔を見てミナも同じ意見だと確信したので、オネエさんに言った。


「俺達二人は受けないを選択します。それで処理してもらえますか」


「アラアラ〜、受けないのね〜。ここ数年特級が出てないから受けて欲しいけど、そうよね〜。この制度が変わらないと増えそうにないわね〜。ギルドも冒険者の自由を保証するって言いながら、特級はギルドで徹底管理って感じだものね〜。分かったわ、冒険者ギルドカルマン支部の看板受付嬢の私に任せてちょうだい!」


 そう力強く言ってくれたオネエさんに頭を下げて俺達はギルドを出た。 


 次に向ったのは商業ギルドだ。もちろん、途中の町中の気になった屋台やお店も覗きながらだけど。今日は一日用事が無いから、ブラブラと町を眺めながら今朝までに思いついた事をやっておこうとミナと話をしていたのだ。

 案内役をかってでてくれたセダンさん夫婦と一緒にのんびりと町を散策しながら商業ギルドに到着した。ここではミナが登録する予定だ。早速受付に向かう。


「商業ギルドカルマン支部にようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 と、スレンダーで耳が少し尖ったお姉さん女性がミナに声をかけてきた。


「あの、まだ何も商品などは考えてないのですが、登録だけって可能ですか?」


 ミナが聞くと、お姉さんはニッコリ笑って


「はい、勿論大丈夫です。但し、登録には銀貨三十枚が必要になります。それで最低ランクの【ブロンズ】会員としての登録が可能です」


 そここらお姉さんの説明が始まった。商業ギルドの制度は、


【一般】会員

 自分で店舗を持っている個人商店主など

【ブロンズ】会員

 駆け出し商人がギルド特典を受けられるように設けられた会員制度で、ギルド加盟店での物品購入時に5パーセントの割引が適用される。また、商業ギルドで直接必要品を購入する時に低利での分割払い(最大24回)を利用する事が可能になる。登録時に銀貨三十枚が必要で、翌年から年会費として銀貨十枚の支払い義務がある。

【シルバー】会員

 それなりに商取引を経験して、利益を上げられる商人が【ブロンズ】を止めてなる会員。年会費は銀貨五十枚に上がる。ギルド加盟店での物品購入時に10パーセントの割引が適用される。また、商業ギルド斡旋の貸し店舗を広さに応じて月銀貨十枚〜金貨一枚で借りる事が可能になる。

【ゴールド】会員

 商業ギルドの上位会員で、理事会のメンバーになる事も可能な会員。割引などの特典は受けられないが、有能な店舗に投資をして利益配当を受け取ったりが可能。(全てギルドが手配する。店舗は本人が選ぶので、減益の時もある)また、ギルド所属の各商店を指導する事も可能。

【ホーリーゴールド】会員

 理事会の会長や副会長を務める事も可能な最上位会員。商業ギルドから融資を受けて事業拡大や、社会貢献に務める事を義務付けられるが、貴族、王族の顧客を優先的に回してもらえるメリットが大きい。



 みたいな感じらしい。また、ブロンズ会員から商業ギルドの預金口座を使用可能になり、各ギルド支部で受取や支払いが可能になるので便利てすよとも教えてくれた。

 ミナは【ブロンズ】会員に登録したよ。まだ何も商品などがないけれど、何かしら売る物が出来たら一度見せに来て下さいねとお姉さんに言われた。担当も私になりますと言って名乗ってくれたライヤールさん。お祖父さんがエルフだったそうだ。


 それから、商業ギルドを出てまた町を散策しする。暫くするとセダンさんが、


「僕とユリアはこの先にある孤児院に用事があるんだけど、二人はどうする?」


 そう聞いてくるので、構わなければ俺達も行きますと返事をしたら、それじゃあ行こうと言って四人で向かう事になった。

 孤児院では大変な事が起こっていた。




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