第30話 朝から騒々しい
翌朝はアランがノックもせずに部屋に乱入してきた。しかしそのタイミングが最悪だった。
俺が洗面室(寝室とは別部屋)で顔を洗っている間にミナとアカネちゃんが着替えをしていたのだ。俺は二人に着替えが終わったら声をかけてくれと頼んでいたのだ。そこにノックもせずに扉を開けて、アランが飛び込んできたのだ。
「アカネ、無事かっ! ナゾウに変な事はされてなっ、い、かっ! し、失礼しましたーっ!!」
再び扉が閉まる音がして、それから
「キャーッ! 変態! 何で部屋の中に居るのよっ!」
とミナの叫び声が。俺は洗面室から寝室をコソッと見てみたら、両手で顔を隠した(隙間有り)アランが後ろを向こうとして、言い訳をしている所だった。
「い、いや! コレは違うんです! 師匠! アカネの事が心配でっ……」
「で、着替え中に飛び込んできて、よりによって私の
「アランくん、ナゾウくんはミナちゃんがいるから私に変な事をしてきたりしないよ。ミナちゃんにゾッコンだから…… アランくんがこんな変態さんだったなんて…… ちゃんと事前に言ってくれたら二人っきりの時ならいつでも見せてあげるから、今は部屋を出てくれるかな?」
惚れたアカネちゃんに変態さんと言われてショックを受けたアランは静かに扉を開けて本当にスミマセンでしたと言って出ていった。こりゃ、後半のアカネちゃんの言葉は聞いてなかったな。後で教えてやるかと思いながら俺も洗面室にそっと戻った。
五分後に二人から着替えが終わったよーと言われて部屋に戻ると、ミナもアカネちゃんも俺に、
「聞こえてた?」
と聞いてきたので、
「うん、聞こえてた。けど、二人が着替え中だから、敢えて部屋には行かずにいつでも行ける場所に待機していたよ。まあ、アランだって分かってたのもあるけどね」
「ナゾウはやっぱり優しいね。ちゃんと私達の事を考えてくれてるんだから」
……言えない。
暗算極みが仕事をして、俺が悲鳴を聞いて部屋に飛び込んだら更なる悲鳴が上がるし、変態認定されてしまうと計算されたから、行かなかったなんて。
「アランくん、悪い子じゃないから許してあげてね、ミナちゃん。ちゃんと二人っきりになった時に私が言っておくから」
「あっ、その事だけどアカネちゃん。アランに見せてあげるって言ったの多分アランの耳には届いてなかったよ。だけど、軽はずみにあんな事を言わない方がいいと私は思うな」
「えっ!? ミナちゃんはまだナゾウくんに見せてないの?」
「えっ!?」「えっ!?」
俺とミナの言葉が重なる。
「だって、二人は婚約者同士なんでしょう? それに、この世界だと成人してる事になってるし、もうそういう事も経験済みなのかなぁって思ってたんだけど……」
少し顔を赤くしながら、しかも俺をチラチラ見ながらそう言うアカネちゃん。俺は誤解を解く為に俺が心に決めてる事を、ちょうどいいから証人になってもらう為に、ミナに言った。
「あのさ、ミナ。俺達がいた日本だと十八歳で成人になって、男女共に婚姻出来るようになったよね。だから俺は、ここは異世界なんだけどそれは守ろうと思ってて。お互いに十八歳になったら、正式に結婚しようと思ってたんだ。それが俺が心に決めてた事なんだよ」
俺が緊張しながらミナにそう言うとミナが
「うん、分かってた。ナゾウがそう考えてくれてる事。私は嬉しかったんだよ。だから、先に言うね。私は今日、十八歳になったの。能力値の年齢が十八歳になってたから。だから、ナゾウは三日後に十八歳になるね。そしたら……」
そう言って教えてくれたよ。だから俺もミナにちゃんと言ったんだ。
「あ、ああ。ミナ、三日後に正式に言うから、待っててくれるかな?」
「うん、待ってる」
そんな俺達のやり取りを食い入るように見てたアカネちゃんが、
「甘〜いっ!! もう、二人とも甘々だねっ!! 凄い、凄い! こんな所に立ち会えるなんて! 私にはこんな甘々は無理だけど、ミナちゃん本当に良かったね。おめでとう! ミナちゃんも知ってる通り、私は隠れ変態さんだから、アランくんには徐々に知ってもらうよ」
えっ!? アカネちゃんが自分自身を変態だって言ってるよ! 俺のビックリ顔を見てアカネちゃんが言う。
「あ、ナゾウくんが居たんだよね。ナゾウくん、今の内緒でお願いします。でも、私の頭の中はイケナイ妄想でいっぱいなんだぁ。ラノベ読んでても主人公とアンナ事やコンナ事を……」
「ストーップ! 分かったから、アカネちゃん。誰にも言わないから安心していいよ」
何せ、俺も負けず劣らずな妄想者だからね。特にミナの前では紳士ぶってるけど、頭の中では…… いや止そう。
それから、朝食の席に現れたアランが正式にアカネちゃんとミナに謝罪をした。アメリアちゃんからも謝罪された二人は、ワザとじゃないのは分かってるから、もういいよとアッサリとアランを許していた。マロはミナの足元に来て、ミナだけに
『のう、ゴールデンボタンボアは今日の昼には料理してくれるか? それとも、今からか? いつやるのだ? 我は楽しみにしておるのだ』
と、ずっと話しかけていたそうだ。根負けしたミナが、宿屋の庭を借りて料理する事を決めた。幸い、今は俺達しか宿泊客が居ないらしく、快く使用許可をくれたので、それならと宿屋の人達も一緒にと誘って、みんなでバーベキュー擬きを昼から楽しむ事になった。
ノンビリしてるけどいいのかなとは少し思ったけれど、元々俺もミナも何か使命がある訳でもないし、護衛依頼を出してくれてる当人達がそうしたいと言うのなら、いいよな。
そして、ミナの収納職人の
因みに近隣に匂いや音が漏れないように、壁を出して、更に換気扇が稼働されて、匂いは天高く上がっていったので、誰にもバレずに済んだようだ。
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