第22話 「闇医者、鈴蘭」


車の中にいる全裸の女性。誰から見てもシュールな絵面。


「久しいねっ!積もる話はあるけど、その前にアレを中に入れてもいい?」


この状況を創り出してる本人は呑気に話してくるので、樹はお手上げポーズで家の中へ。


『それを車から出すなら見た目どうにかしてから出しなよ』


そう言うと、薄手の布を相手に渡すと外に連れ出したのでそのまま家へ。

中に入ると玄関のカギを閉める。


篝火かがり、コレ何処に入れたらいいかな?」

『二階右側奥の部屋に入れとくといいよ。鍵これ』

「アリガト、ちょっと行ってくる」


震えて何も言えぬ女を後ろから小突いて二階に連れて行った。


この様子だと鈴蘭はだいぶイラついてるんだろう、あの女の未来は地獄以上に酷いものになるんだろうな。


「あの女、何したと思う?」

『職場で嫌がらせでも喰らわせたとかだったり』


人間に興味しかない変態は、基本的に何があっても怒りよりも興味が先に来るような奴だ。

なのに、その人間に向かって真っ先に怒りが向くこと自体が珍しい。


樹と二人であれこれ話してると、上から悲痛な声が聞こえたがすぐに何も聞こえなくなった。

そしてすぐに鈴蘭がリビングに入ってくる。


「待たせたね。あの女のことはとりあえずほっといていいから、まずは依頼の方を話すとしようか」

「また今回は荒れてんな」


あの子の話になると、とたんに表情を無くす鈴蘭。

これに関してはそのうち向こうから内容を話すだろうからと考えが一致したので、樹と二人でその話題に触れるのをやめた。

三人でソファに座り、改めて鈴蘭から話を聞くことに。


「じゃ、改めて持ってきた依頼の内容を話すね。まぁ簡単に言うとシッター探しの依頼でさぁ」

「シッターなんて探せば何処にでもいるもんだろ?」

「問題はそこでね?探してるのはそういうシッターじゃないの」


こっち側への人間へ頼む仕事ってのは普通の内容ではないことはなんとなく理解していたので、訳ありだろう。


『刑務所の人間を見るシッターとか言わないよね』

「見てほしい人は70代のご婦人なの」

『老人ホームの間違いだろ』


樹と二人で頭に?を浮かべていると、鈴蘭も困ってるらしく詳しく内容を話していく。


依頼相手は70代の女性で、どうやらこの女性は赤ん坊の格好をするのが好きらしい。

もともと人に甘えたりするのが好きではあったらしいんだけど、そこから段々と欲求は膨らむ。

赤ちゃんの格好になり寝転がり、おむつを替えてもらったりミルクを飲ませてもらったりということをしてもらいたいらしい。

尚且つお世話してもらいたい相手は母親役のできる女性に限る、と。


「……お、おう…」

「なかなか特殊でしょ?」

『冗談かましてるのかと思うようなもんを持ってきたね』


この依頼は今回限り請け負ってくれる人を探すのか、それともこれからずっと継続してくれる人を探すのか。

この条件次第で見つかるかどうかも変わってくる。


一回限りの条件であれば仕事と割り切って変人の相手をしてくれる人は少数ではあるがいるのだが、長期となるとそうもいかず苦戦しそうだ。

しかも女性限定。


三人で自分たちの伝手の中でそういった趣味を持ってる人がいないかと話題も出たが、残念ながらそういった人種は付き合いがない。


『そういう人たちが集まるバーを経営してる奴は知ってるよ』


その一言で今日のこれからの予定は決まる。


「なら、今日はそこに行くのは決定だな」


これから行くということを相手に連絡を取ると、私たちの分の席は確保しておいてくれるということだった。


『なら、次は上の二人をどうするかだ』

「私が連れてきた女の方は死ぬより辛い思いをさせてから殺すつもりだから、つど思いついた時に行動を起こすつもり」

『父親の方も最終はそのつもりだったんだよね』

「なら、有効活用したらいいじゃん」


その申し出に樹と顔を合わせてから内容を促し聞く。


「篝火の客って珍しいものを欲しがるコレクターが多いじゃん?なら、それ用に保管して死ぬまで有効に使えばいいんじゃねって」

「まぁ、死んだら使えなくなっちゃうもんねぇ」


確かに一理ある…


『なら、ちょうど男女揃ったしどっちも保管でいいんじゃない?』


そう提案すると、鈴蘭はYESの返事とともにさっそく今から行動しようという。


「なら善は急げ!早く採取に行こう!!」


道具を持ってくると告げて車にイキイキと行く後ろ姿に呆れつつ連絡する。


篝火:保存用の男女一組手に入ったんだけど、欲しいとこある?

uta:ちょうど良かったわぁっ、女の血液と髪の毛。男なら精液ね。今日待ってるね♡


帰ってきた返事に顔をしかめてると樹が覗き込んで同じ表情をした。


「女はいいとして男の方はオレやだよ」

『いっそ樹が提供してあげなよ…』

「泣くぞ?」


何とも言えぬ表情でいる二人のもとに帰ってきた鈴蘭が内容を聞き、男の方は自分がやると、いい笑顔で引き受けてくれた。


「でも、押さえつけて縛り付けるまではやってよ?」


そこは樹に任せた。

二階に三人で行き二手に分かれ私は女のいる部屋へ入る。


「誰!?」


全裸で鎖に繫がれてるだけでもパニックだろうに、そこに知らない人が入って来てさらに混乱しているようで部屋の隅で縮こまってる。

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