第13話 「泣器性愛(ダクライフィリア)」2


苦悶の表情で二度と息をすることのなくなった姿を、アンナは恍惚とした表情で見つめ続けた。


数分待ってみても何も言わないので口を開く。


『あの…自分はあと何をすれば?』

「この子をバラバラにして、クラスにぶちまけてやろうと思ってるの」


うわっ、同じクラスだからヤダな


とりあえずは移動することになり、遺体を大きいバッグに無理矢理詰め込み移動する。



学校に到着する頃にはPM17:32

辺りは日がほとんど沈み教室内も薄暗くなってきた。


「ここで死体をバラしてもらいたいんですけど可能ですか?ある程度の道具はこのリュックの中に入れてきました」

『まぁ、できないことはないですけど…』


正直面倒なのでやりたくはないのだが、仕事として言われたらやるしかない。

アンナは何やらやりたい事があるらしく、準備のために何処かへ行った。


『バク、血抜きしたいから手伝って』


ゴム手袋を装着しながらそう言えば返事の代わりに影が揺れる。

まずは遺体を机の上に乗せリュックから鉈を出し頭と首を切り離す。

溢れ出てくる血液をバケツで受け止めてバクが血抜きを終えてくれるまで待つ。

バケツ4つ分ほど溜まったところで終わりらしく、次は手足も関節ごとに切断。

胴体部分は腹を裂いて内臓を全て外に引き摺り出す。一通りの作業が終わる頃にアンナが何かを抱えて戻って来た。


「早かったですね。もっと時間がかかるものだと思ってました」

『まぁ、色々と方法があるので。手に持ってるのは何ですか?』


チラッと覗き込めば用紙に大量印刷された鈴の写真。

先程撮影したばかりのものを印刷機でコピーしてきたのであろう。

すっかりバラバラになったものを見たアンナはおもむろに血液が入ったバケツを一つ取り、次の瞬間


バシャァッッッ!!!!


教室中に中身をぶちまけた。

血液と臓物を教室中に向けて振り回し、腕や足などの部位を投げつけて頭部は教卓の上に置く。

飛び散るものが容赦なく紅にも降りかかるので、それが不快で1番被害の少なさそうな部屋の隅へ身を寄せて避難し終わるのを待った。



「はぁっ…はぁっ…」


30分程だろうか、暴れ回っていたのが落ち着いてきた。


「私がやりたい事はやり尽くしたわ」

『では、この場をもって依頼は終了とさせていただきます。依頼料は計300万』


金額を伝えると鞄から取り出した茶封筒を差し出され、中身を見ると150万入ってた。


『残りの150万は貴女の体から一つ貰って払ってもらいます。命には別状は無いし、そこは安心してください』

「わかりました」


アンナの同意を得てから一度教室を出て裏門まで行くと、そこには一台の黒いバンが待ってた。


コンコンッ


篝火かがりです、用件は前話した通りに』


窓をノックしてそう伝えれば助手席の窓が開いて一つの錠剤を渡される。

それをアンナに飲むよう言い、手渡した。


薬を受け取った後は少し不安そうに手元と紅を見比べた後、意を決して口に放り込む。

すると飲み込んで2〜3分してふらつき始めると、その場に倒れ込んだ。

アンナはその後すぐに車の中に運び込まれ、助手席から渡される封筒を受け取り鞄にしまう。


「また依頼がありましたら、ご連絡ください」


車が去り全部終わったので帰ろうとした時、


[見られた見られた]

[こっち見てた]


風の呟きを聞き慌てて目線だけで辺りを見回せば、美沙と琴が少し先の街灯下でこちらを見ている。

服装や見た目が違うのでまだ気づかれてはいないが、バレない保証はない。

走り去る2人の後ろ姿を無表情で見つめ風の声に従い走って帰宅した。




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