第9話 「齋藤美穂の両親」
ピリリリッ ピリリリッ
『………はい』
「小鳥遊おはよう」
寝ぼけながら鳴り続ける電話に出ると、担任の声が耳に入る。
寝坊してお怒りの電話かと思いもしたが時刻を確認するとAM5:30
『こんな時間の連絡とか不吉なんですけど』
「せっかくの休日に悪いな。昨日のことでうちのクラスは全員登校になったから、いつも通りの時間に登校な」
それだけ言うと担任はさっさと通話を終わらせた。
目も覚めてしまい仕方なく朝食でも作ろうとベッドを出る。
トーストと簡単につまめるものを3人分用意してから、まだ寝てるであろう2人のもとへ。
『おーい、朝だぞ』
声をかけるが起きる気配は全くない。
枕もとに屈みネットで購入したゴキブリのおもちゃを2人の口元に置く
『……さっさと起きないと口にゴキブリ突っ込むよ』
「ムリィッ!!」
「うそでしょ!?」
『うん、嘘』
ポカン…と顔を見上げてくる姿を横目に、さっき担任から来た電話が来たことを告げて朝食に誘う。
『担任の電話だけどさぁ、絶対昨日のやつが警察から知らされて知ったからだよねぇ』
「そうだと思うよ」
「今から胃が…」
朝食をのんびり食べ終わり、各自それぞれが登校準備を終える頃には家を出るのにちょうど良い時間だ。
◇
学校に着くのはいつもと同じ8時ちょい前の時間。
教室に入ればもう全員揃っていた。まさかのビリけつ。
「よし、全員揃ったな。はじめるぞ」
この時、誰が思っただろう。
今日を境に全てが変わってしまうこと。
大切な友人を殺し、自分が殺人鬼と呼ばれることとなり、
今日この日から、生き方や出会いが決まるなんて思いもよらないだろう。
「お前たちも昨日か今日のニュースで齋藤のことはすでに耳にしてるだろう」
そういい新聞を取り出して説明を続ける。
「犯人についてはまだ目星はついていないと警察には言われているので、今日から帰宅の際は注意して数人で帰るように」
この後は警察が来て1人ずつ話を聞くことになってると告げられ
「美沙、琴、紅の3人は校長室に来るように」
案の定、呼び出しを喰らった。
プラス、クラス中の視線がおまけで付いてくる。
校長室に行くまでの廊下の道のりをゆっくり歩きながら、一気に不安そうな顔の2人と話をする。
「何言われるかな…」
「怖すぎ…」
『たぶん昨日のことを一通り聞かれるとは思うけどさぁ、別に何か悪いことをしたわけでもないのに何をそこまで怯えるの?』
「美穂の親はきっと来るよね」
「いたたまれなくて…」
『あぁ、そっち気にしてたの?両親が居ようがいまいが変わらんよ』
ちょうど目的地に着いたので2回ノックをして中から声がかかってからドアを開けて入る。
「昨日の今日なのに話を聞くことになって悪いね」
中には校長と担任、そして美穂の両親が座ってた。
全員が席に着くと父親が口を開く。
「琴ちゃんに美沙ちゃんは久しぶりだね、もう1人の子は初めまして。昨日は私達の娘を見つけてくれてありがとう」
両親は娘を見つけてくれたこと、今まで仲良くしてくれたことにお礼を告げてから本題へ。
「警察が調べても何もわからないの。誰の仕業なのか、身内か無差別なのか…あなた達から見て何か思い当たることとか無いかしら?恨まれてたとか、彼氏がいたとか…」
母親にそう問われるが何も知らない2人は顔を見合わせた後、首を横に振る。
「君は?何か知らないかな?」
全員の視線がこちらに向き、この前の出来事が脳裏に浮かぶが、
『いえ、何も』
ここで言ってもどうしようもないので、そっと記憶に蓋をする。
その後は美沙達が両親と少し言葉を交わしてから、担任に帰ってもいいと言われたので玄関へと向かう。
途中、教室の前に差し掛かるとまだクラスに残ってたらしい人達がどっと出てきて囲まれた。
「美穂の死体を見つけたって本当なの!?」
キーキーうるさい
「誰が最初に見つけたの!?琴ちゃん?それとも美沙!?」
「死体はどんな感じだった?!」
それを知ったところで何になる?いっそ君で再現してやろうか。
自分たちの好奇心で身勝手なことしか言わない奴らの質問に美沙と琴は、
「ごめん」
「私達は何も見てないんだぁ」
と、質問をかわしてさっさと歩いていった後ろを自分も追いかけて校門前で解散した。
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