第6話 「地下室」
目の前にある紙に書いてあるのは至って普通の文字だ。
名前:工藤アミ 性別:女
年齢:5歳 身長:107㎝
体重:15.3kg 血液型:A型
【診察結果】
・季節の変わり目による風邪
・咳止め、抗生剤の処方
特におかしなところはない。
『普通のカルテに見えるけど』
〔問題は裏よ〕
言われた通りに裏を見ると、大量の写真が貼り付けてあった。
〔偶然これを見つけて医者に問いただしたけど、何も答えてはくれなかった〕
まぁ、普通は言わないよね。
〔私はすぐそのカルテを持って警察に通報してやろうと思ったんだけど、玄関に向かう最中に声が聞こえたの。
聞き間違えるはずがない、私の娘の声…
この廊下の奥に誰も気づかないような場所に地下へ行く階段があったの。声はそこから聞こえてきてたわ。
その声を頼りに慌てて向かったら…声が…〕
小刻みに震えて俯き、一度顔を手で覆ってそのまま話し出す。
〔近づけば近づくほど異常に気づいたわ。泣き声はおかしいし、叫び声に近かったわ…。それに、そこにいたのは娘だけじゃ…なかったの。
あの子は…ベッドの……上に、上…に…〕
その時のことを思い出しているのか、突然髪を振り乱しながら顔を上げた。
〔手足はベッドに縛られてた!それだけじゃないっ!あの男はっっっ、あの男は娘にっ!!口にするのも
そこまで叫んで一呼吸置き、また喋り始める。
〔私は思わずその場に立ちすくんでしまった。でも、それがいけなかったのね。後ろに気配を感じた次の瞬間には頭に強い痛みが走って…気付いたらここにいて、それ以外は覚えてないの〕
話はこれで全部らしい。
さて、どうしたものかと考えを巡らせていると琴が口を開く。
「成仏するの手伝ってあげようよ」
その言葉に美沙もうんうんと頷いているが、正直なところめんどくさい。
まぁ、話を聞く流れになった時点でこの展開を予想しなかったわけでもなかったんだけど。
『成仏する手伝いって言うけど、何をどうすれば満足して成仏していくのか皆目検討もつかないんだが』
そう伝えれば2人は黙り込んで考えを巡らせ始める。
何分か経ったが良い案は浮かばず、院内を見て歩きながら考えていく方針になった。
◇
建物内を全員で見回っていたけど、特に何の変哲もない何処にでもある廃病院。
『そういえばさ、私は霊感持ちだから霊の
なんの気無しにそんな質問をしてみると、
〔普段ならこんなことはもちろん無いんですけど…昨日ここの地下で女の子が1人殺されたのが原因かと〕
「「えっ……?」」
ここでまさかの爆弾投下。
『ユイ、地下に案内して」
〔こっちよ〕
とりあえず地下へ行かないと何も始まらないので、殺人が起きたことはポロッと頭から抜けた2人を連れてユイの案内で地下へ向かう。
コツッコツッコツッ
懐中電灯の明かりを頼りに歩く3人の足音だけが辺りに響く。
階段を1番下まで降りた時、ムワッと鼻をつくような生臭い鉄の匂いがした。
きっと一度も嗅いだことがないであろう臭いに2人は戸惑い袖で鼻と口を覆い、紅は目の前にある4つ扉を観察する。
右側奥の扉はきっとこの臭いの原因が、左側の手前はユイが気にしてるので例の部屋だろうと察して最初は手前の扉を開ける。
キイィィィ………
何があってもすぐ対応できるように警戒しつつ中に入ると、中は病室だろうか?
点滴スタンドや電子モニターなどの機械があるが、それよりも目につくものがある。
『内側にドアノブ無し、壁には鎖が繋がってて外に出れない絶妙な長さ。
どう見ても監禁部屋だよねぇ』
極度の緊張で部屋の真ん中に立ちっぱなしになってる2人の顔は白を通り越して青くなってる様子を見ながら、部屋の角のある衣装ダンスのようなものの扉を何も考えずにパッと開けた瞬間、
「「きゃーー!!」」
中から中年男性と幼女が裸体で映ってる卑猥なポルノ写真が大量に溢れ出てきたのと同時に、3人が持ってた懐中電灯が突然消えた。
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