07_遠ざかる希望
ゴオオオオオオオ。
春野は、できるだけ手足を動かし、闇から逃れようとするが、思うように動かない。
危ない!?
危うく、春野は、転びそうになる。
「大丈夫か!頑張れ、扉が見えてきた。扉に入れば、ヤミヤミも襲ってこない」
倉内は、春野が転びそうになっているのを見て心配する。
春野は、前方を見ると、確かに錆びついた小さな扉が一つあった。
あの扉に、なんとかたどり着かないと……。
「扉まであと少し。頑張りましょう」
今野は、春野に話しかけ元気づける。
「はい」
春野は、ただひたすらに扉に向かって、手足をできるだけ振り、命を燃やして走る。一歩一歩が重く、彼女の体力を着実に削っていく。
あと少し、あと少しで扉まで行ける。
春野は、体力の限界に近づいていたが、最後の力を振り絞り、扉へと駆けた。
やっとの思いで扉の目の前までたどり着くと、取っ手に向かって春野が、まっすぐ手を伸ばす。
伸ばした手が、扉の取っ手に触れようとした瞬間、急に目の前にある扉が遠ざかっていく。まるで春野たちが入るのを拒絶しているかのように。
「えっ……嘘でしょ」
春野は、突然、離れていく扉を見て思わず身体の力が抜け転倒する。急いで立ち上がろうとするが、苦しくてなかなか立ち上がり動くことができない。
闇が迫ってくる。もう、扉に駆けていく体力は残っていない。
希望が目の前から遠ざかり、絶望が迫る状況。春野の額から零れた汗が通路の無機質なコンクリートに当たって弾ける。
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