永遠を生きる

シヨゥ

第1話

「忘れられることがなにより悲しい。だから作品を世に出すんだ」

 作家はそう語る。

「僕が死んでも作品は残るからね。作品だけは永遠を生きるんだ。その中に僕はいる。僕がこの世を去ったとしても、作品の中で生きるんだ。未来の誰かが作品を取った時に僕は思い出してもらえる。そういう構造さ」

 語る作家は楽しそうだ。

「そしてそうなった段階で僕の願いは達せられる。僕の夢はね。自分の作った作品の中で生きることなんだ」

 その目は輝いていた。

「汚い言葉を使うようだけど、僕は現実をクソだと思っている」

 穏やかにだけど力強く語りは続く。

「だから僕は作品に夢や希望を込めて、空想の世界を描くことにしている。クソの世界は見飽きているからね。生きたい世界を描くんだ。生きて生きて生き切って、そして死ぬならこんな世界が良い。そんな世界を描くんだ。だからもし僕が死んだら作品の中でまたなにかを書いていると思ってもらえたら嬉しいな」

 そう言ってほほ笑む。

「以上、終わり。ご清聴ありがとうございました」

 作家が一礼する。すると拍手が起こる。ここにいるファンはきっとあの作家の微笑みを忘れないだろう。杖を突いて去っていく作家の後姿を見てそう思った。

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永遠を生きる シヨゥ @Shiyoxu

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