第63話 開戦の合図
攻撃の道具があるならば、当然に逆もある。それが
ムッチョーダ側に、こそこそと移動をはじめていたコーザは、その道中、ルーチカに小声で話しかけていた。
「スキルの発動に関しては、権限が最終的には妖精に委ねられている、そうだな? なら、お前たちには争わないっていう、選択肢があるんじゃねえのか。どうして抗争に参加している?」
「俺様たちはスキルを使いつづけることで、存在が保証されているきらいがあるからな。見ただろ? 野良の妖精たちがどういう状態だったのか」
言われて思い出せば、出会った妖精たちはみな、意気消沈したようにうつむいていた。まさか、あれは長期にわたって、技を使用しなかったための、弊害だとでも言うのか?
黙考するコーザをよそに、ルーチカは言葉をつづけた。
「まっ、実際は自分が何もしなければ、相棒が殺されちまうからだと思うぜ。たまにスキルを使わねえからって、早々には俺様たちも、死人みたいにはならねえからな。だが、それも自分の相棒が、いなくなっちまうってんなら話は変わって来る」
「次のパートナーがいつ見つかるのかは、本人にもわからない……か」
「そういうこった。悠長に待っていても、相手が襲って来るのだけは確実だからな。仕方ねえよ」
やがて、工作地点にまで到着すると、コーザたちは耳飾りとそこで別れた。
手持ちの
「この隙を狙う……耳飾り!」
にわかに辺りが湿りだす。
(霧……か?)
いな、それはすぐに雫となった。壁や人、場所を問わずして、その表面に水滴が付着しはじめたのだ。当然、それは
「俺たちはミージヒトだ。行くぞ」
短期決戦だ。
氷結のメンバーは、ほかにも大勢がこの場に来ているとはいえ、成員の数には限りがある。拠点を守っておくための人員も、幾人かは残しておかなければならないだろう。その点を踏まえるのであれば、やはり敵の混乱が落ち着くまでの間に、ミージヒトを見つけだしてしまいたい。
狙いは初動だ。
入れ墨が走るのに合わせ、コーザとナリナーヅメとも足を速めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます