第3章 ギルドまたはムッチョーダ 抗争の果て
第53話 逃走
逃走が先か。あるいは追跡が先か。いずれにしろ、コーザは逃げ、一方のムッチョーダが、追いかけて来ていることだけは確かである。
「待ちやがれ、テメエ……コーザ!」
無論、素直に足を止めるはずがない。そうでなくとも、自分は氷結の仲間だと思われているのだ。捕まったら何をされるのか、わかったものではない。
背後からの発砲。
コーザの横を銃弾が通り抜けていく。その弾の軌道に沿って、砂礫の線ができているあたり、これが相手のスキルなのであろう。
走りながら、それを強めに手で叩いてみれば、見かけによらず、思いのほか頑丈であることがわかった。
(……石拾いみたいなものか)
狙った箇所に出現させられるぶんだけ、もっと厄介である。
とにもかくにも、このまま駆けつづけなければおわってしまう。脇目も振らずに走るコーザの正面から、また一人、別のギルメンが現れていた。
それに気がついたコーザは、慌てて通路を横に折れ曲がる。
よくない傾向だ。
コーザに地の利はない。それどころか、ただでさえ普段から訪れない場所なのだ。勝手が全くわからないと言ってよいほどに、ムッチョーダとの差には、絶望的な開きがある。
相手の誘導によって、自分が闇雲に走らされていることは、コーザ自身も気がついており、額には脂汗が浮かんでいた。
(やるしかねえ……か)
これでも、自分はムッチョーダと敵対しないよう、日頃から注意を払っていた。たまたま、氷結の頭がおかしかっただけで、コーザとしては、積極的に刺激しないように努めていたのだ。
だが、このままでは、訳もわからぬままに殺されるかもしれない。それよりかは、自分も武器を手に取ったほうが、まだ幾ぶんはマシであろう。
手を伸ばす。
覚悟を決め、コーザも腰から拳銃を引き抜いたのである。
次の誘導は食らわない。立ち塞がるムッチョーダの人間には、容赦せずに発砲する。今のうちから、そのスキルを決めておこうではないか。
「
「はいよ」
小声で相棒とやり取りをすれば、通路の先に人影が見えた。
パン!
先に向こうの火花が散る。
応戦しようと、引き金に手をかけたとき、驚きのあまりにコーザは言葉を失った。
壁だ。
突如として眼前には、木で組みあげられた巨大な盾が、ものの見事に出現していたのである。
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