第24話 それはちょっと、捻くれた見方なんじゃないのか?
チャールティンは、さも得意げにニシーシの肩へ乗った。くり返すが、実際に体重を預けているわけではない。それを見るにつき、ルーチカは「どうやるんだ、それ?」と興味津々な様子になり、コーザの肩で真似しそうになったところを、手で振り払われた。
そんな二人を、チャールティンは白眼視する。
「はじめてしまってもよろしいですの?」
「ああ……どうぞ」
うっとうしそうにルーチカを見返しながら、コーザはぶっきらぼうに、チャールティンへと返事をした。「仲がいいんですね」というニシーシの台詞を、聞かなかったことにしたあたりで、チャールティンの話ははじまった。
「先ほどの情報屋が嘘をついている理由は、ニシーシに、レクチャーの話を振らなかったからですの」
「さっすが、ニシーシびいきの妖精は言うことが違うぜ」
「当たり前ですの。控えめに見積もっても、あなたの十倍は人格者ですわ」
なまじ能力の話でなかっただけに、否定しようにも難しい。皮肉を鋭く両断されたコーザは、決まりが悪くなったため、後頭部をかきむしるしかなかった。それを揶揄したルーチカは、不運なことに、コーザのやつあたりを受ける。
「――んで? ニシーシに未踏破領域での、立ちまわりについて教えなかったことが、どうして嘘をついていることになるんだよ」
「あなた、自分で言っていて気がつかないんですの? 話を聞くに、情報屋とかいう人物は、ニシーシがダンジョンに不慣れであることを、どう考えても見抜いていますわ」
「だろうな」
(スポットを知っているわけでもねえだろうに……。それを看破できるお前のほうが、うちは恐ろしいよ)
「そうでなければ、あんな事細かに、一々説明する必要がないですもの。それなのに、ニシーシに話を振らないのは変ですわ」
「……?」
「あなたから平然と金をまきあげる程度には、利益にがめついにもかかわらず、ニシーシに教えを売って来ないのが、不自然だと言っていますの。まさか、未踏破領域の手前まで、案内できると話しておきながら、同行者に何も注意しないなんて、ありえないでしょうから、伝えられる話はあるのでしょう? もちろん、実際に対価を支払うのはコーザですし、それは向こうも、ニシーシがダンジョンに不慣れな点から、理解していることでしょう。不慣れなニシーシが、お金を持っているはずがありませんから。それゆえに、あなたがニシーシを、どうとも思っていないのであれば、事情は違うでしょうが、コーザは情報屋に、連れて行かなければならないことを、はっきりと申していますの。だから、先ほどの話は単なる友好の証ではなく、あなたから新技とやらの情報を、聞きだしたかっただけなのだとわかりますわ」
「それは……いくらなんでも考えすぎだろう」
たしかに、情報屋にレベルアップしたということは、自分からは伝えていない。そのような機会がなかったからだ。だが、情報屋ほどにこの世界に精通していれば、人伝に聞いていたとしても不思議ではない。別段、疑うようなものでもないだろう。
「それなら、別にかまわないですわ。あなたもコーラリネットには、戻る予定がないのでしょうし……」
それもそうである。
仮に、コーザから新技の情報を盗んだとしても、それをどうやって使うというのか? 一番考えられそうなのは、コーザに対する直接的な危害だが、それもコーラリネットから離れようとしている、今の状況に照らせば、とても有効とは思えない。まさか、未踏破領域くんだりまで、刺客がやって来るとでも言いたいのか?
(ありえないな……)
コーザは首を横に振って、チャールティンの話を頭の隅に追いやった。
しかし――。
チャールティンの指摘するように、ついに情報屋は、ニシーシに未踏破領域での、チップスを教えることはなかったのである。コーザの無事を願っているはずであり、ニシーシのことを庇うと、わかりきっているだろう情報屋が――である。
それが何を意味するのか。さしものチャールティンにも、見破ることはできなかった。
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