第5話 とても嬉しい事ですが・・・

「さて、色々と聞きたい事が山の様にあるじゃろうがまずは五行属性を得るのが先じゃの。」


いやいや。まずは説明がどう考えても先だろう。

いや、俺は元々はこっちの世界の人間じゃないし、もしかしたらこれが普通なのか。とりあえず全く分からんが返事だけしておこう。


「そうだな。」


「ん???」


「ど、どうした?」


ミコトは目を見開いて急に近寄ってきて俺の顔をジロジロと覗のぞいてきた。

コイツ、神様のクセに可愛い顔してるから、そんなに近づかれると・・・。


「うお、どうしたのじゃ!キョウよ!急に顔を真っ赤にしてもうてからに(笑)」

(クソー!恥ずかしいー!)


可愛い顔で笑いながら話すミコトが神様じゃなかったらなぁっなんて思ってしまった。

ミコトは当たり前だけど、何も気にする事なく会話を続けた。


「さっきも言うたが五行属性を得てから説明した方が早いんじゃ。」


「そ、そうなのか。じゃその五行属性ってのを頼むよ。」


ミコトは俺の周りをグルグル回りながらブツブツと独り言を言ってるみたいだ。


「ど、どうしたんだ。」

「いや何、お前が転生者だからなのか分からんが、特異な五行属性を持ってるようじゃの。」

「特異???どういう事だ?」

「まぁ、五行属性を目覚めさせれば分かるじゃろ。じゃ、ちょっと目をつぶってみろ。」


「え。あ、あぁ。」


俺は言われるがまま目をつぶった。

(ん!!こ、この感触かんしょくは!)


目をつぶった状態の俺に柔らかいものが俺の唇と重ねあった。


「よし!完了じゃ!」

「い、今のって・・・。」

「ん?おー、今のは口移しと言っての。私の唇とお前の唇を重ね合わせたのじゃ。」

「いや、く、口移しって・・・あの、キ、キスした・・んだよな?」

「なんじゃ?知らんかと思ったわ。したがどうしたんじゃ?口移しなど誰でもするであろうに。」

「いや誰でもはしないぞ普通!」

「そうか?お前達人間の常識ではそうなのだろうな。まぁ気にするな。」


いやいやメチャクチャ気になるわ。

だが、それよりもメチャクチャ柔らかかったな。

さすがは神様だ。キスのレベルも違うってことか!

とまぁ、そういう話はどうでもいいが、問題はそれじゃない。

五行属性を得るのになぜキスなのか?という疑問がある。

とても聞きにくいが、キスする事に何の疑念もないんだから大丈夫だろう。


「なぁ、俺の五行属性を目覚めさせる話から何で急にキスをしたんだ?」


いい年したオッサンの俺が顔を真っ赤にしてるのが自分でもよく分かる。

いや、前世ではいい年したオッサンだったがこちらの世界ではピチピチの13歳だから問題はないか。

いや、だが転生をした訳だし今の俺は見た目は子供、頭脳はオッサンみたいな感じだろうし。

そうこう一人ブツブツ呟いていると、ミコトが話を始めた。


「口移しはな、全員に行ってる事じゃから、別に気にする事でもあるまい。口移しをしなければ私の祝福は受ける事ができんしな。」

(え・・・今とんでもない事言わなかったか?!)

「ちょ、ちょいすまん・・・。今全員って言った?」

「言ったがどうしたんじゃ?」




「全員って現段階で五行属性を持っている人間全てって事だよな・・・。」

「そうじゃの。そうなるな。」


コイツ。神様のクセに何てヤツなんだ。

可愛い顔してる割に慣れすぎてんじゃないか?

怖い・・・女って怖い・・・。


「ぜ、全員と直接キスできるなんてす、すげぇな。」

「ん?何をいっておる?全員と口移しなんてする訳なかろうに。それにさっき言ったはずじゃ。私が姿を現わすのは稀じゃと。」


(・・・・。)


「はぁ?!い、いやお前今全員にしてる事って言ったじゃないか。」

「ふぅ、これだから人間は困るのぉ。私は痴女か何かか?そんな風に神を見るとはお前・・・最低だの。」


「いやいやいや・・・。」

(いかん、訳が分からんなってきた・・・。)


メチャクチャ困惑している俺を見てかなのかミコトは小さく溜息を吐いて口を開いた。


「言い方が単調過ぎたかもしれんな。分かりやすく言うとな、通常は私の魂の欠片を埋め込んだ女神像が勝手にやってくれとるんじゃ。」

「え?女神像なんてどこあるんだ?」


「本当ならお前が異空間に来た時点で私ではなく、女神像がいるはずだったんじゃ。お前の場合私がいたから、もちろん女神像もない。少し考えたら分かるじゃろに・・・。」

(いや、分からねぇって・・・。てか、女神像がキスをするのか?めっちゃ気になる。)


俺はそれがとても気になってしまい、ついミコトに質問した。


「あの、女神像がいるはずだったって言ったけど、女神像がキスをするのか?」

「女神像というよりもその中の魂の私がキスをしとると思うぞ。」

「それって結局ミコトがキスしてるんだよな?」


「いや私という神は一人しかおらん。あくまで私の魂が行ってる事じゃからな。」


もういいや。納得するしかないよな。

何か意味分からんなってきた。

何だかホッとしたような。

でもまぁ、今この時点では前の世界で死んで転生してこの場所でミコトに会えた事を深く感謝しよう。


(ありがとう。前世の死んだ俺・・・。ありがとう。転生した俺・・・。ありがとうミコト様・・・。)


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