第2話 エンペル家
俺は服を着替えて一階へと降りた。
一階の部屋の台所的な所へ行くと父親と母親と今の俺の兄弟である長男がいた。
とりあえず、初めての対面という認識ではなく、あくまで家族という感覚だ。
全員の名前も、もちろん記憶の中にあるので分かる。
正直安心した。
ちなみに、父親の名前はエンペル=ローランド。
あと、長男の名前がエンペル=エルリス。
俺の1つ上の14歳でグロリペンス学園という所に通ってるらしい。
見た所、裕福な感じで前世で住んでいた俺の住まいに比べると天と地の差だ。
記憶によれば、自意識過剰じいしきかじょうで弟の俺を常に見下しているみたいだな。
うむ。最悪な野郎だな。
ともかく、前世での記憶は一旦忘れて前を向いて行こう。
前世で俺は結婚すらできず死んでしまった訳だし、この人生で是非とも平和に生きて結婚して幸せに暮らすんだ。
俺は、まず父親と母親に挨拶をした。
「おはよう。父さん、母さん。」
「キョウ、遅いわよ!今日は大事な日なの忘れたの!」
「まったくだ。」
(ん?今日は一体何の日だ?記憶にないな。分からん。)
そこでエルリスがここぞと言わんばかりに会話の中に入ってきた。
「母さん、仕方ないよ。このキョウだよ?エンペル家に生まれながら炎の五行属性ごぎょうぞくせいどころか、そもそも五行紋ごぎょうもんすら現れてないんだから。」
そう言いながら、エルリスが手の甲を見せながらかなり偉そうにしている。
(五行紋?なんだそりゃ?)
俺の記憶の中に五行属性なる情報が一切ない。
一応この世界の人間なのに、分からない事があるのか。
まぁ、予想というか流れ的におそらくエルリスの手の甲に刻まれた紋様みたいなのがそうだろう。
とりあえず何か分からんが、このエルリスは好かん。
同じ兄弟とは思えない。
口の悪いエルリスが俺を見下した目で見ながら言い終わると次に父親のローランドが口を開いた。
「エルリス、黙りなさい。本来は13歳になって初めて教会へ出向き、神からの祝福を受けて五行属性を得るのだ。お前は他の人間と違い特別だったんだ。キョウも今日教会へ出向き神からの祝福を受ければ五行紋と五行属性を得る事ができるだろう。」
(よく分からんがエルリスは特別みたいだな。何だか気に食わないが・・・。ってか普通そういう決まりがあるなら、記録して保存しとくとか方法があるだろうに。)
なるほど。13歳になってからか。そりゃ記憶にないはずだ。
だが、この会話の流れである程度把握できたぞ。
おそらく今日は、13歳になった俺が教会へ行って、神からの祝福とやらを受けて五行属性っていうのを得る訳だ。
この異世界にはこういう儀式があるんだな。
まぁ、前世で外国に出張した事もあるが、小民族のいる地域なんかで、そういう文化も確かにあったな。
よくよく見てみると父ローランドは首の付け根辺りに。母クリスは胸と首の丁度中心部分に・・・。
場所はエルリスとは違うが似た感じの紋様がある。
そこで俺は一つ気になった事があった。ローランドとエルリスの紋様は赤色みたいな色をしているのに対して母クリスの紋様は青色みたいな色をしている。
もしかすると、男は赤で女は青みたいに分けているのかな?
色々と気にはなってしまっていたが、俺もその神からの祝福を受ける時間帯がやって来たらしく父親に教会へ行ってこいと言われたので訳も分からないまま出発する事にした。
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