第8話 見つかる居場所
「いたぞっ、梅子っ!!」
私と勇作の唇が触れるか触れない釜で近づいた時、お父様の声がした。
私たちは目を見開き、ばっと声の方を見ると、私のお父様とお母様がいた。お父様は怒ったように力を足に込めてこちらに向かってきて、お母様はお父様の半歩後ろを歩いていた。私と勇作は立ち上がり、二人を待った。勇作は「大丈夫だ、僕を信じて」と言ってくれた。嬉しい気持ちと私の親だから私がどうにかしないといけないと思った。だから、勇作だけでなく私も気合を入れた。
「キミは・・・・・・佐伯・・・・・・勇作くんじゃないか」
お父様がそう言うと、勇作は深々と頭を下げて、
「お久しぶりです、東城さん」
と、礼儀正しく返事をする勇作。お父様はまだ状況を理解できないような顔をしていたけれど、お母様はどうやら察した様子だった。
「東城さん・・・いいえ、お父様。娘さんの梅子さんを僕にください」
そう言って、勇作はお辞儀をしたので、私も勇作の妻になる身として一緒に頭を下げた。
「なっ・・・・・・」
お父様は十九年間で一度も聞いたことも無いような声を出して驚いた。
「キミは確か・・・・・・」
「はい。僕は養子に入り、そして、今回の件で絶縁されるかもしれません。けれど、必ずや梅子さんを幸せにしてみせますっ」
「お父様っ。せっかくお見合いを用意してもらったのだけれど、私は勇作と一緒になりたいですっ」
私も追撃するが如く、勇作の言葉に続ける。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬっ」
お父様の悶絶しそうな声。
本当に辛い。
気持ちが乗らないまでも、お父様とお母様が家と私の将来を考えて設けてくれた席だ。それをよりにもよって当日に無下にするなんていうのは家に泥を塗ることだし、二人に多大なる迷惑をかけることになる。
「貴方・・・っ」
お母様の声が聞こえた。
お母様とお父様が何をしているかわからなかったけれど、私たちは頭を上げずに二人の言葉を待った。
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