痴漢から超絶可愛い銀髪美少女を助けたら非モテ陰キャだった俺が急にモテモテになりました
シア07
第1話 俺の目の前で痴漢が起こっている!?
「るんる~るんる~るるるる……」
コツコツと足跡を鳴らしながら俺――橋本誠は鼻歌を歌いながら歩いていく。
外の空気は異常なまでに美味しく、気持ちがよい。
そして機嫌がめちゃくちゃにいい感じだ。るんるんだ。
なぜならば、今日は……
「――入・学・式だからだよ!」
そう、高校1年生の入学式なのだ!
私立
第1志望だったわけもあって本当に楽しみだ。
偏差値も高く、共学の高校で、家からも電車で5駅なため非常に近く通いやすい。
楽しみで仕方がない。そのせいで昨日はほとんど寝れなかった。
「……どうなるのかな。楽しみだなぁ高校生活。勉強に部活。それに――恋。今度こそ彼女とか作ってみたいよな……友達もほしいし。中学生とは同じ道は辿らないぞ!」
中学生だった時のことを思い出す。
無気力でただただなにもせず、勉強だけをした生活を。
「ああならないように頑張って行こう。自分から色んな人に積極的に話しかけたりしないとな」
そう思いながら電車に乗った。
朝の通勤時間と重なっていて混んでいたようだった。
空いている席がないので仕方なく近くのつり革につかまり、立つことにする。
ガタンゴトンとなりながら出発した。
「うわ……綺麗だな……」
どんどんと風景が変わっていく。
なんかわからんけど凄い! これぞ青春って感じがする。
気持ちがいい。
そして何駅が過ぎたところで。
「お、あの制服……」
銀髪の美少女がゆっくりと入って来た。
一瞬目が合うが、すぐに逸らす。
そして俺の斜め前で立ち始め、鞄から小説を取り出し、読み始める。
その女の子には俺と同じエンブレムがあった。多分、同じ高校だろう。
制服の色も俺と同じだし。
「……凄い美人さんだ。可愛い……」
美しく、可愛かった。
銀髪の長髪ですらりとした体形。出ている所は出て、引っ込むところは引っ込んでいて、俺好みの体だった。
同じ学年なのかな。……いきなりだけど、話しかけてみようかな。
友達にもなってみたいし。でも怖いな。俺とは違って絶対モテるだろうし。
話が合うのかな……
そんなことを考えていた時だった。
「……え?」
すぐ後ろにいた男が……その少女のスカートの中に手を入れ始めた。
ぐふふとか言いながら気色悪い感じで触っている。
その銀髪の美少女は、苦しそうに身を縮めていた。
これってもしかして俗にいう痴漢というやつでは!?
そして俺は気づいた。痴漢で間違いないだろう。
……初めて見た。なにをしたらいいのかわからない。
電車にほとんど乗ったことがなかったからこれは当たり前のことなのだろうか。
……いやでも、そんなわけないよな。そんなことが日常茶飯事で起こってるはずないし。
俺は周りをみてみる。
だれも気にしていないようでほとんどの人がスマホに集中していた。
銀髪の女の子には気づいていないようだ。
ってことは気づいているのは俺だけってことか。一体どうしたら……
「……けて……助けてぇぇぇぇぇぇ……」
ちょうど駅につき、ひと段落ついたところで銀髪の女の子が小さな声で訴えかけていた。
涙声で苦しそうだ。
だけど、やはり携帯をいじるだけでだれも気付かない。
――俺がやるしかない!
そう思ったとき、無意識に行動していた。
「この人痴漢です!」
「え?」
男はびっくりした様子で声を出す。
なにかされるとは思っていなかったようだ。
女の子も驚いた様子で俺の方を見だす。
周りも俺の声でなんだなんだと騒ぎ出した。
「うわ痴漢だって……」
「最悪じゃん」
「これ駅員呼んだ方がいいんじゃない?」
注目されている。いまがチャンスだ。
「俺、見ました。この女の子のスカートの中に手を入れている所!」
「ち、ちがう。そんなことはしていない。誤解だ!」
「誤解なんかじゃない。俺はきちんと見ました。観念して駅員さんのところに行きましょう。この人にきちんと謝るべきです」
もう一度少女の方を向くが、まだびっくりしているらしい。
まあ無理もない。こんなことされておいて驚かない方がおかしい。
「ほら、行きますよ」
手を引っ張り、駅を降りようとする。
しかし……
「……嘘をつくんじゃない。大人をあまりおちょくるなよ。早くこの手を放せ!!」
反抗してくる。意外としつこいぞ、こいつ。
「あ……」
そして、力を入れられ、そのまま逃げられた。
「おい、待て!」
「俺はやってない!!」
俺は電車から出て、その男を追いかけに行く。
「……ちょっとま……」
電車から出る直前、だれかに話しかけられた気がするが、そのまま無視して追いかける。
「くそ……あいつ意外と足が速いな。なにかやってる人なのか!?」
流石大人と言ったところか。
普通に足が速い。
だけど……俺は。
「中学の時、短距離走100m学年5位だった俺をなめるなよ!」
もっと速い。
すぐに追いつき、腕をつかむ。
「もういいんじゃないですか。観念してください。あなたは痴漢をしていましたよね?」
「……くそ……俺がやったよ。やりました……」
「ならよろしい。ちゃんと駅員さんのところに行きましょう」
笑顔でいう。
ようやく解決したようだ。めでたしめでたし。
俺は男を連れ駅員室に連れていく。
そこにいた人に引き渡して、これにて騒動は終わった。
「ふう……これでなんとか終わったな。入学式にこんなことができるなんて超気持ちいい……いやでも待て。そういえばあの銀髪の人はどこに行ったんだ?」
周りを見渡すが、どこにもいない。
まさか……
「あの電車の中にいるのか!?」
追いてきてしまった。
せっかくやったのに本人がいないとか全く意味ないんだけど!?
どうすればいいのこれ!?
「はぁ……まあそりゃそうだよな。俺がいきなり追いかけただけだし、いるのを期待する方がおかしいよな。ていうか同じ学校ならそっちで言えばいいし。さっさと向かおう」
電車に向かおうとして近くに時計をみると。
「……えっと今の時刻は8時10分か。なかなかな時間……ってあああああああああああああああ」
発狂する。
「ヤバいヤバい。ってことはあと10分で入学式が始めるってことじゃねーか」
時間が結構経っていたようだ。
本来なら10分前に着く予定だったが、乗り過ごしたせいで遅刻がほぼ確定した。
「最悪だよ。あんまりだよ……初日から遅刻とかある意味伝説になるよ! しかも痴漢と戦ったとか、俺の人生いきなりハードモードだよ!!」
苦言を吐きながら、さっきのホームに戻った。
少しの間、電車が来るのを待つしかない。……もう間に合わない。
はぁとため息をついた。
悲しいけど、受け入れるしかないな。
……そう思っていたのだが、現実は意外と優しいらしい。
「先ほどはありがとうございます。私を助けてくれて……」
「あ……残ってたんだ……」
目の前には銀髪の美少女が笑顔を向けている姿があった。
「私もあなたもどちらも遅刻ですね!」
ニコリと笑った。
……可愛すぎる。
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