美少女な学校の王子様兼義理のお姉ちゃんに恋愛関係を迫られている件
藤樫 かすみ
第一章 突然現れた王子様
プロローグ 突然現れた美少女
「彩葉ちゃん、実は貴方にはお姉さんがいるの。」
高校二年生の夏、母からそんな告白をされた。
「彩葉ちゃんには高校生になったら言おうと思ってずっと隠してたの。」
「待ってお母さん。い、意味がわからないんだけど。お姉さん?」
私の母は破天荒で雑な性格で、今までその適当さに何度も困らされてきた。が、流石にこれは酷い。いくら雑だからと言っても、許される事と許されない事がある。前々から大切な事を隠す癖があると思っていたが、こんなとんでも事案を隠していたなんて....。
私が絶句していると、母は嬉しそうに一人の少女を連れてきた。その少女はぱっちりとした目に、長いストレートの薄緑の髪、手には皮と思われる黒い手袋、すらっとした高身長の、例えるなら王子様を思わす様な、中性的な美少女だった。
「この子、彩葉ちゃんと同い年なの。名前は戸神 侑李ちゃん。生まれたのは侑李ちゃんの方が早いから、彩葉ちゃんのお姉さんよ。」
そう言って母は私の質問にも答えず、ニコニコと笑っていた。
「さあ、侑李ちゃん。挨拶して!」
母に言われて、その美少女は私に話しかけた。
「初めまして、戸神 侑李(とがみ ゆうり)です。君とは異父姉妹?になるのかな。今日からよろしく、桜宮さん。」
そう言って微笑んだ美少女の笑顔は眩しかった。最初に驚いてよく見てなかったが、この人やっぱりすごい美形だ。
「ほら、彩葉ちゃんも挨拶して?」
ご機嫌のいい母にそう言われ、私も何とか声を出した。
「は、初めまして、桜宮 彩葉(さくらみや いろは)です。よ、よろしくお願いします。」
そう言うと少女はニコリと笑った。ま、眩しい!
「じゃあ夜ご飯にしてちょうだい!私はお父さんに会ってくるから。あ、彩葉ちゃんには今度会わせてあげるからね!」
「ちょ、ちょっと待ってお母さん。夜ご飯ってどう言う事?お母さんが食べるんじゃないの?」
そう言うとお母さんは、ここ一番最高にニコニコと笑って答えた。
「何言ってるの、今日から侑李ちゃんも一緒に住むのよ。夜ご飯は侑李ちゃんの分!じゃあ、お母さん行ってくるわね!」
そう言ってお母さんは家を出て行った。私と美少女二人は、そのまま玄関に残された。私が母の後も追いかけられず固まっていると、
「....とりあえず、上がってもいいかな?」
と、美少女は私に尋ねてきた。まさかここでこの美少女を門前払いにするわけにもいかない。私は自分の顔が真っ青になるのを感じながら、
「は、はは。汚い家ですが、どうぞ...。」
と、スリッパを差し出した。
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とりあえずダイニングに入れて、お互い向かい合って座った。その美少女・戸神さんはちゃんとした説明もなく混乱しているだろうと、私にここに来るまでの経緯を丁寧にも教えてくれた。
「実は桜宮さんのお父様と結婚される前、僕のお父さんとお母さんは愛人関係で、既に子供が出来ていたんです。それが僕。で、それを桜宮さんのお父様に隠して出産、その後僕のお父さんが一人で育ててくれていたんです。だけど最近桜宮さんのお父様と離婚して、僕のお父さんと再婚した。つまり、僕達は異父姉妹になったってことです。」
「は、はぁ、」
私は混乱する頭を抑えた。まず私は、お父さんと離婚していたことさえ知らなかった。仲が悪くて何年も前から別居していたのは事実だけれど、まさか離婚していたなんて……。あの適当人間、物には程があると知らないのか。私がしどろもどろになりながら何とか理解して頷いた。戸神さんもどうやらまだ混乱しているらしい。
「急にこんな話されても困りますよね、分かります。僕も急にお母さんのところに住めなんて言われて来たから、実はあまり状況は理解してなくて……。」
そう言って俯いた姿はまさしく可憐で、悩んでいる姿さえもが綺麗だった。って、見惚れている場合ではない。とりあえず今は、家を追い出されてしまった戸神さんの住居を獲得すべきだ。話を整理してまとめて落ち込むことは、後からいくらでもできる。
「あの、とりあえず、ご飯、食べますか?」
「...え?」
「あ、えっと。今日、お母さんが帰ってくると思って沢山作りすぎちゃって....。もしお腹空いてたら、一緒に食べてもらえるとありがたいんですけど....。」
私が申し訳なさそうにそう言うと、戸神さんは端正な顔で私に笑いかけた。
「夜ご飯はまだだったんだ、ありがたく頂くよ。」
私はその言葉に頷いて夜ご飯の準備をした。今日は珍しくお母さんが夜ご飯を準備してと言ったから、張り切ってしまった。白米に、ビーフシチュー、シーザーサラダに、ローストビーフ。二人分以上のご飯を作ってしまっていて、正直戸神さんがいなければ処理に困っていたところだ。テーブルに並ぶ料理達を見て、戸神さんは目を輝かせていた。
「おまたせしました、食べましょう。」
「凄い……これ、全部桜宮さんの手作り?」
「まぁ、今日はちょっと張り切り過ぎたんですが....。」
どことなくテンションが上がっている戸神さんは手を合わせて、いただきますと言い箸を手に取った。私も箸を手に取る。戸神さんはまず一口ビーフシチューを食べて、さらに目を輝かせた。
「美味しい、桜宮さん、凄いよ。こんな美味しいご飯久しぶりだ。」
「喜んでいただけて良かったです。」
そう言って戸神さんはあんなにあった料理を、全部美味しく食べてくれた。自分のご飯を褒められたのは久しぶりだ。よく食べてくれる戸神さんの姿に私の箸も進んだ。
「「ご馳走様でした。」」
夢中で食べていたせいか、気づけばお皿はすっかり綺麗になっていた。
「あの、ありがとうございます。こんなに食べてくれて……。」
私は戸神さんに感謝を述べた。私に姿に戸神さんは「そんな、」と言って逆に感謝してくれた。
「こんなに美味しいご飯、ご馳走になってしまって僕の方が感謝だよ。」
そう言って笑う戸神さんの笑顔は、私が今まで見てきた人の中でこの上なく綺麗だった。
「いつも、ご飯食べてくれないの?」
「へ?」
戸神さんに急に質問されて、私は驚いてしまった。
「お母さん。」
そう言われて、私は質問の意味を理解した。
「あ、まあ、お母さんはお仕事忙しくて、なかなかご飯は一緒に食べれなかったんです。仕方ないんですけどね、!ごめんなさい、こんな暗い話しちゃって、!」
「いや……じゃあさ、僕でもいい?」
「へ?」
「桜宮さんと一緒に、毎日ご飯食べてもいいかな?桜宮さん一人でご飯食べさせないって、約束するよ?」
戸神さんの急な真剣な目に、私は心を射抜かれてしまった。そんな、真剣な目で見られても……。私が戸惑っていると、戸神さんは立ち上がってテーブル越しに私に近づいてきた。
「……っ!!!???」
細い指で、顎をクイッと上にあげられる。これって言わゆる顎クイじゃ……!!!???
戸神さんは変わらず真剣な目で言った。
「寂しくさせないから、ね?」
私はテンパってしまい、言われるがまま頷いてしまった。それを確認すると、戸神さんはずっと離れていった。触られたところがじんじんしている……。私の心臓は飛び出そうなくらいドキドキしていた。
「急に近づいてごめんね、お詫びと言ったらなんだけどご飯も頂いたし僕がお皿洗うよ。」
「……は、はい。」
私はそう答えることしか出来ず、戸神さんは何事もなかったかのように淡々とお皿を流し場に運び、洗っていた。
い、一体何だったんだろう……。き、急に近づかれて、あんな綺麗な顔近くで見ちゃって……!てか私はなにドキドキしてるの!!!戸神さんはただ質問しただけなんだから、いやでも、顎クイなんて普通しないよね。でも....。てか私なんでこんなにドキドキして、まるで恋してるみたいじゃない!!と、色々考えていたところで戸神さんに声をかけられた。
「お皿洗い終わったよ、……大丈夫?」
「…………はい、す、すみません。」
私は赤くなっているだろう顔を隠すようにして、立ち上がった。
「あ、あの、部屋案内します。多分空いてる部屋あったから!!」
「……うん、よろしく。」
戸神さんは大きなキャリーケースを持って、私のあとをついてきた。
―――――――――――――――――――――――
私は、二階の空き部屋を案内した。扉を開けると、何も無かったはずの部屋にはベットと本棚、机が置かれていた。きっとお母さんが準備していたんだろう。私は戸神さんにそのまま案内した。
「ここ、自由に使ってください。」
「ありがとう。……桜宮さんの部屋は?」
「あ、私の部屋は隣です。なにかあったらいつでも呼んでください。」
「……うん、ありがとう。」
「はい!じゃあ、私お風呂沸かしてきますね。」
そう言って私は戸神さんの部屋を後にした。少しだけ緊張してしまった。なんだか、戸神さんは綺麗すぎて一緒にいると変な気持ちになってしまう。私は熱い顔を冷ましながら一階に降りた。キッチンの湯沸かしボタンを押して、湯張りする。お風呂を沸かすと言っても湯張りボタンを押すだけだ。戸神さんも疲れているだろうから、お湯に浸かってもらおうと思った。
湯が沸くまでの時間、私は日課の読書をしようと本を手に取って、ダイニングに座り本を開いた。いつも一人の家だから、静かに感じるのに今日は落ち着かなかった。いつもみたいに静かで音なんてしないのに。やっぱり戸神さんがいるから、落ち着かないのだろうか。本にもなかなか集中できない。私は溜息をつきながら、さっきの戸神さんの話を頭の中で思い返した。
「実は桜宮さんのお父様と結婚される前、僕のお父さんとは愛人関係で、既に子供が出来ていたんです。それが僕。」
「いつも、ご飯食べてくれないの?」
「お母さん。」
お母さんはいつも大事な事は相談してくれない。一人で全部、勝手に決めてしまう。いつも事後報告だ。今日だって、離婚したことぐらい教えて欲しかった。戸神さんはもちろん、新しいお父さんの事なんて、知らなかった。最近家に帰ってなかったのも、もしかして――。私はダイニングに飾ってある、お父さんとお母さんと私で撮った写真を見た。いつか、お父さんとお母さんは仲直りすると信じていた。そうして私のご飯を美味しく食べてくれると、信じてやまなかったのに。いよいよその夢は叶わなかった。私はいつの間にか頬に暖かい涙が伝っていることに気づいた。新しいお姉ちゃんに新しいお父さんと、変わってしまったお母さん。
――寂しい。お父さん、私はどうしたらいいの。
私は少しの間だけ、涙を流した。
はっと意識が戻ったのは、湯張りボタンの完了の音が鳴ったからだった。私は涙を拭って、椅子から立ち上がった。戸神さんにお風呂入ってもらわなくちゃ。私がそうして階段を登ろうとした時、ちょうど二階から戸神さんが降りてきた。
「あ、戸神さん!ちょうど良かった、お風呂沸きましたよ、先に入ってください!」
「……ああ、うん、ありがとう。」
少しだけ元気な振りを取り繕う。戸神さんは私をじっと見ていて、お風呂場に行かず私に近づいてきた。
「桜宮さん……、」
「な、なんですか?あ、お風呂場ならあっちですよ。」
私の頬に、黒い手袋をした手が添えられる。皮の手袋でやけに感触が生々しい。
「目が赤い、泣いてた?」
私はドキッとしたけれど、すぐに笑って見せた。
「充血です、泣いてなんかいませんよ。」
「…………そう?僕の勘違いかな。」
「………………はい、勘違いです。」
しばらく沈黙が続いた。戸神さんはまっすぐ私を見て、呟いた。
「……桜宮さん、寝る前に話したいことがあるんだ。部屋に行ってもいい?」
「私がお部屋に行きますよ。」
「いや、僕が話すんだから僕が部屋に行くよ。とりあえずお風呂入ってくるね。」
そう言い残して、戸神さんはお風呂場に向かった。
私は頬に残る感触に違和感を感じながら、私はダイニングに座った。戸神さんはご飯の時もさっきも、とにかく距離感が近い。私は溜息をつきつつ、ぼーっとしながら戸神さんがお風呂から上がるのを待っていた。ふと携帯を見ると、ラインにお母さんからメッセージが入っていた。
『侑李ちゃんとは上手くやれてる??』
私は『大丈夫、ご飯食べてお風呂はいってもらってる。部屋も案内しました。』と返事を打った。流石に新しいお父さんの事は聞けなかった。私が携帯を閉じると、タイミング良く戸神さんが「上がったよ。」とダイニングに立っていた。
「桜宮さん。お先にいただきました。」
「いいえ、湯加減大丈夫でしたか?」
「うん、気持ちよかったよ。ありがとう。」
戸神さんの長い髪は濡れていて、その濡れた髪が戸神さんの顔の美しさを際立たせていた。
「じゃあ、私、入ってきますね。」
「うん、行ってらっしゃい。」
私はその美しさから逃げるようにして、その場を去った。
熱いシャワーを頭から浴びて、頭をすっきりとさせる。同じシャンプーのはずなのに、何だかいつもよりいい匂いがした。私はなぜだか高鳴る胸を押さえながら、湯船に浸かった。
今日は本当に色々あった...。お母さんはどっか行っちゃうし、戸神さんは来るしで、なんだかんだで一緒にご飯を食べたりして...、話って何だろう。やっぱり、戸神さんも気になることがあるのかな...。私はぐるぐるとそんなことを考えていた。そう考え続けていたらのぼせそうだったので、私は早々に湯船を上がった。
髪の毛を乾かしてからダイニングに行くと、戸神さんは髪の毛を乾かし終わっていて、ソファに座っていた。
「戸神さん、お風呂あがりました。」
「早かったね、ちゃんと浸かった?」
「はい、ちょっと考えすぎちゃってのぼせそうだったので、早く上がっちゃいました。」
「そっか、」
「部屋にいきましょうか、お風呂も上がった事だし。」
「水分取らなくていいの?のぼせかけたんでしょ?」
「大丈夫です、ほらいきましょ!」
私は戸神さんを立ち上がらせて、2階の部屋へと向かった。
_______________________
「どうぞ、ベットに座ってください。」
「失礼します。」
私は戸神さんを自室へ入れた。扉を閉じて、一人分の距離を開けて戸神さんの隣に座る。ベットが二人分の重さで沈んだ。
「ごめんね、疲れてるだうに。」
「あ、いや、それは戸神さんだって一緒ですよ。...それで話ってなんでしょうか?」
「ああ、ごめん。本題に入るね。」
そう言うと戸神さんは、私に向き合った。
「桜宮さんに言わなきゃいけない事があって。」
「はい、なんでしょうか..?」
戸神さんは一つため息を落とすと、私に向き合って言った。
「僕、レズなんだ。」
「.....????」
「女の子が恋愛対象なんだ。」
「……!!!???は、はぁ……、」
私の頭はその言葉を理解するのに、数秒の時間がかかった。レズ??女の子が恋愛対象???何となく聞いた事があるけど、もしかしなくてもそれの事だよね。そんな、戸神さんがそんなセクシャルを持っていたなんて……なんだがでも、戸神さんだったら分からなくもないかも……。一気に私の頭の中で考えが巡る。戸神さんは不安げな目で、私を見つめた。
「……やっぱり引くよね?」
私は盛大に首を横に振った。
「……いえ、そんな!引くだなんて!ごめんなさい、少し驚いちゃったけど私はいいと思います。」
早口でそう弁明すると、戸神さんは安心したのか微笑んでくれた。
「よかった。嫌われたらどうしようかと思った。」
「そんな、戸神さんの事嫌うなんて……!」
「ふふっ、優しいね、桜宮さんは。」
そう言うと、戸神さんは空いていた一人分の隙間を埋めて、私の隣にピッタリとくっついた。そのまま近くで顔をまっすぐ見られる。戸神さんは背が高いので私が見上げる形になっていた。そのままお互い沈黙が流れている。
「……でね、桜宮さん。君が好きなんだ。」
「……へ????」
「会って早々だけど、桜宮さんが好きなんだ。僕の恋人になってくれない?」
私は突然の告白に、自分の耳を疑った。今、この人何と言った?好き?戸神さんが私のことを?こ、恋人?一体どういう風の吹き回しなの?そ、そんなまだ今日会ったばかりなのに、好きだなんて信じられない。にわかには信じられるはずがない。
「……あの、どういう事ですか??好きって、その、まさか恋愛的な意味で……っ???!!!」
戸神さんは、いきなり私の肩を優しく抱き寄せた。私は気を抜いていたせいで戸神さんに寄りかかる体勢になる。体が密着して、私の鼓動は心臓は跳ね上がった。
「あ、あの、戸神さん……。」
「そのまさか。恋愛的な意味で彩葉が好きなんだ。恋愛には女の子とか男の子とか関係ないから、安心して僕を好きになってくれればいい。」
何にが安心してだ、と思った。私はドキドキした心臓を抑えることもままならないまま、戸神さんの顔を見つめることしかできなかった。戸神さんは女の子なのに、どことなく中性的な雰囲気がする。女の子の中の王子様みたいな、そんな感じ。しかも綺麗な顔立ちをしているから、そんな顔で見つめられたら誰だってドキドキしてしまうはず...。私は何とか混乱する頭を整理して、戸神さんの言葉を考えた。考えたけれど、混乱した私の頭に浮かんだのは、一つの妥協案みたいなものだった。
「あの....!」
「うん、なあに?」
「私、戸神さんとは家族になりたいん..です。一緒にご飯食べて、その日あったことをお話しして、休日は一緒に遊びに出かけれらるような..暖かい家族。血が繋がってなくても私達、姉妹ですし...だから私、戸神さんと恋人とかは考えられなくて....。」
戸神さんは私の話を聞くとふふっ、と笑った。
「あの、私何かおかしなこと言ったでしょうか?」
「いや、彩葉は大胆だなと思って。」
笑いながら戸神さんは、私をさらに強く抱き寄せた。
「あ、あの戸神さん.....。」
「わかった。彩葉がそう望むならそうしよう。じゃあまずはお母さんが入り込めないほど、暖かい家庭を作ろうか。恋人関係なんて後でいくらでもなれるもんね。まさか付き合う前に、先に家族になれるなんて、嬉しいよ。」
「と、戸神さん?」
「あ、でも僕の事⦅ただのお姉ちゃん⦆だなんて思わせないよ。意識させて、好きになってくれるようにアプローチはどんどんしていくから、覚悟しててね?彩葉。」
「ほ、ほんとに、本気で私の事が好きなんですか?冗談とか、からかってるとか...。」
「冗談でもないし、からかってもない。僕は本気で彩葉の事が好きだ。まあ、でも今日会ったばっかりだし、彩葉もまだ僕の事わからないと思うし、受け入れられないのは無理ないよ。これからゆっくり理解していけばいい。」
「戸神さん....!」
「好きだよ彩葉、これから毎日覚悟しててね。」
「....!!!!!!?????」
いつの間にか彩葉と呼ばれているし、混乱した頭を整理することは出来なかった。ただ、この目の前にいる美少女にどうやら私はアプローチされている事だけはわかった……。
「お気持ちには、答えられません..。」
「明日も口説くから、好きになったらいつでも言って?」
そう言って笑う顔は、少し悪魔のようにも見えた。
「僕の気持ちは伝えたから、彩葉は僕の気持ちにゆっくり答えてほしい。僕はいつでも大歓迎だからね。じゃあもう遅いから、今日は寝ようか。お休み、彩葉。」
戸神さんは私の肩をゆっくりと離すと、そのまま立ち上がった。そしてお休み、と言い残して私の部屋を出て行った。私は肩に戸神さんの皮の手袋の感触を感じていた。
「おやすみ、なさい。」
部屋はしん、と静まり返った。私は今夜、寝れるだろうかとほてっている顔を冷ました。
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用意されたベットに僕は腰を下ろした。ベットは女の子らしい洋装で、ピンクがモチーフとなっていた。僕の趣味には合わないかな、と思った。きっとあの⦅お母さん⦆の趣味なんだろう。あの人は僕を可愛い女の子だと勘違いしているから。
僕はカバンから日記帳を取り出した。これは僕が愛用している皮の手帳で、毎日日記をつけている。その中に挟んでいる一枚の写真を、取り出した。
そこには幼い二人の女の子が写っている。僕はその写真を眺めて、胸が締め付けられた。
「やっと会えた、僕のただ一人の運命の人。」
僕は写真を抱きながら、壁に背中を預けた。
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髪の毛を解いて、携帯をセットして、電気を消して、ベットに入り込んだ。今日は色々あったな、とゆっくり頭の中で出来事を思い返す。とは言っても大体は戸神さんの事だ。これから戸神さんと一つ屋根の下、暮らしていくんだ。うまくやれるだろうか、でも戸神さんとなら何とかやっていける気もした。....明日も学校だから早く起きなきゃ。
「何とか、上手くやれそうだよ。お母さん。」
そう言って、私は眠りについた。
ーーーーーーープロローグーーーーーーー
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