One Gadget One Story
書い人(かいと)@三〇年寝太郎
ヒトカブ、いくら?
「あの清純派アイドルの、隠れ恋人との熱愛が発覚!!」
彼女の株価は大暴落だ。
パーソナル・ストック。通称『
今日では、人間の金銭的価値が、
えげつねえ時代になったものである。
数十年以上前に会社の株式市場が24時間開放され、前場・後場といったものは消滅。
さらに人間そのものを株式化する動きが急拡大し、この島国ではほぼ全国民の経済的価値が証券――ヒトカブとして成立している。
「私も、ヒトカブ公開しようかなあ」
「健康診断受けないと」
「
さて、あまりに人間の価値が低いと個人のヒトカブを売買するのは大変なので、地域――国家や州、都道府県、市区町村のレベルでそこに住む人々を対象にしたヒトカブが出来た。
それが地域ヒトカブ――通称『エリア』である。
無論、戦争になろうものなら、その場所のエリアそしてヒトカブは暴落するのが決まりである。
空売りは、平たく言えばカブの価値が下がるほど儲かる取引方法だ(上がれば損になる)。
まず、持ってもいないカブを『あとで買うと約束』して売ってしまい、下がったところで買い戻し、あとは決済としてまた売って取引が完了する。
戦争になることを見越して大儲けして、自身のヒトカブを上げた者もいれば、安全が保証されて(けっこうなことだ)ヒトカブを大暴落させた者もいる。
ヒトカブは人間の価値の露骨なまでの可視化を招いたわけだが、その欲望の反面、自身の収益を守る
人が亡くなれば、その者のヒトカブはもちろん価値が消滅する。
そのためヒトカブ発祥の島国では、AIに管理される、膨大な数の防犯カメラが至る所に設置され、自動防犯ドローンが一定区間・距離ごとに最低1台は巡回している。
金と証券、そしてヒト自身の力で、人類は平和を手にしたのかもしれない。
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