第16話 見てみたくなって

よく父親の部屋にDVDを見に行くことが多かった

部屋にはDVDポータブルプレイヤーがあって

テレビに繋がってないからDVD見るだけのもの

リビングでもDVDプレイヤーはあったんだけど

そもそもテレビを見てるのもそうだし母親がいるから嫌だった

父親はいつも古いアニメを借りて見ていた

自分の知らないアニメのやつを何個も借りて見ていた


「お父さんご飯ー」

「はーい」


DVDを見るとずっと夢中だから

ご飯もお風呂も気づかずに呼びに行く


逆に自分も見たいDVDをそのプレイヤーで見て

「めっちゃ懐かし」

「え?こんなんになってたん?」

「うわぁ……」

途中で切るのが嫌で終わるまでずっと見ていた


いつも見る時は父親がいない時だった

父親の部屋に行って父親の布団に寝っ転がって

見たいアニメを見るのがルーティンだった


「出かけてくるけど」

「じゃ留守番してる」

「分かった、帰る時連絡する」

「はーい、行ってらっしゃいー」


ガチャと玄関の閉まる音がして

自分がとあるものが見たくて

父親のDVDプレイヤーに手を出した


「これって面白いんかなぁ……?」

隠し下手な父親のアダルトビデオ


生ハメ動画だったが

女の人は「気持ちいい」って言うし

男の人はずっと『女の人をハメてる』だけだし

「うーん……?何でこれ持ってるんだろ?」


その中で『旦那さんがいる女の人が取材の男の人にハメられてる』というシーンがあって

ヤってる途中で着信が鳴り、それで中断するでもなく、ヤられながら旦那さんと電話するというものだった

それが何故か自分に刺さったのか

その回だけ繰り返し見ていた


DVDの中に『パスワード付きの特別動画』があって

そのパスワードも特定してしまった

それも見たけどさっきのとはあまり刺さらず

繰り返し見てたものだけを見ていた


「あれ?何かDVDが飛び飛びになってるんだけど。何もしてないんだけどなぁ」

どうやらDVDが壊れるくらい見ていたらしい


その時の自分は

『性行為』に興味は無かった

「そういうものがあるんだ」みたいな

テレビや芸能人とか異次元みたいな世界だと思っていた


父親に入り浸る度にアダルトビデオがどんどん出てきて

気になってしまって見るようになった

「誰かと性交渉がしたい!!」とは思わなかったけれど

『自慰行為』を始めたきっかけになったのかもしれない

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