第48話 作戦は成功


 その朝から、大江戸団地の裏庭にあるちいさな祠の移設工事がはじまっていた。

 工事車両が何台か入り込み、クレーンもブルドーザーも出る、なかなかの大工事だ。

 新しい駐輪場を作るため、古くからある祠を反対側の塀際まで移動させる。そのための工事である。


 そして、その工事を、すこし離れた場所で見つめている少女。

 ゴシック・ロリータ風の衣装に身を包んだ彼女は、ユリア。その正体、妖怪軍師ヌエである。人間どもの作業を眺める彼女の口元には、かすかな笑みが浮かんでいる。


「剣豪戦隊どもめ。自分たちがまんまとしてやられたとは気づいていないようだな」

 くくくと喉を鳴らすヌエ。彼女の眼だけが変化し、縦に割れた瞳が金色に光る。

「わしの狙いは団地などではない。本当の狙いは、団地の住民の署名を集めて、あの忌々しい祠を動かすことじゃ。あれさえどいてくれれば、その下に埋められておる『僧正の聖布』を手に入れることができるからな」


 『僧正の聖布』。それは『三種の魔器』の二つ目である。

 『人魚の手』はブゲイジャーの手にある。だが、『僧正の聖布』はもうすぐヌエの手に入る。



「となると、あとは三つ目。『餓鬼の首』だけだな」

 ヌエは楽しそうに笑う。

「三つともそろえば、そのときこそ人類奴隷化の準備の完成だ。いつまでも地上をデカい顔で闊歩させぬぞ。おろかな人間どもめ」









『剣豪戦隊ブゲイジャー2 地獄の猟犬』      <完>

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