旅館
早速島に着いた私は、泊まる旅館へチェックインしていた。
「清野あみか様ですね。お待ちしておりました。」
メガネをかけた少し暗い雰囲気の管理人が部屋まで案内してくれる。旅館はそこまで大きくない上に少し古いが、洋式を取り入れたお洒落な建物だった。
部屋はせいぜい10部屋くらいしか無いように見える。
この管理人が1人でやっているのだろうか。
「それでは、ごゆっくり。おくつろぎくださいませ。」
「ありがとうございます。」
今日はもう外に出る予定はない。少しゆっくりしよう。
管理人と別れ、私は軽く休憩してから建物を回ってみることにした。
廊下に出て階段へ向かうと、長い茶髪の不思議なオーラのある女性が重そうな荷物を運んでいたのが見えた。登山でもできそうな大きいリュックを背負いながら、これまた大きいキャリーケースを2つ運んでいる。海外旅行でも出来そうな荷物の量だ。
「こんにちは。手伝いましょうか。」
私が声をかけてみると、その女性は少し驚いた様子でこちらに気づいてニッコリ笑ってくれた。
「ありがとうございます。ただ、とても大切な商売道具なので、自分で部屋まで運びます。お気遣い、感謝します。」
少し頭を下げるとまた一生懸命に荷物を運び始めた。立ち振る舞いや物言いといい、とても清楚でどこかのお嬢様という感じだ。
彼女とすれ違いロビーへ行くと、2人の男性の言い争う声が聞こえた。
争いごとは嫌いなので、すぐその場を去ることにしたが、どうやら金銭トラブルのようだ。
その後はお風呂場や食堂、卓球場や申し訳程度のゲームセンターなどを見て回った。
1階に全ての共有スペースがあり、2階は全て客室のようだ。
やはり小さい旅館なので全て見終わってしまったかと思ったら、廊下の突き当たりにこじんまりとした日本庭園があるのが見えた。
興味本位で行ってみると、金髪のラフな格好をした女性が写真を撮っていた。
「あ、どうもこんにちわ〜。」
「どうも。」
「あの、この島の観光もうされました?自然は豊かだし海は綺麗だけど、やっぱ人少ないし何にもないですよね。この旅館も島で唯一の旅館だし。」
突然他人に話しかけられると思わなかったが、これも田舎だからと思い答える。
「今日はまだ着いたばっかりであまり島は見てきてないんです。明日から行動しようと思ってまして。」
「自然しかないですよー。水着持ってるならビーチはいつも空いてるのでオススメですけど。本当に海が綺麗ですからね。」
「そうなんですね。せっかくなんですが、あいにく水着は持っていなくて。」
「お姉さんはなぜこんな何にもない島に?」
「…中学時代の親友に会いに来たんです。この島に今は住んでるみたいで。」
「この島に住む若い人なんているんですね。私は元々この島にすぐ船で行けるところが地元なんですよ。私も久々に地元の友達と会おうってなってこの島にきました。小さい頃その子とはこの島によく遊びに来てて。あんまり景色も変わってなくて懐かしいなぁ。」
「そうなんですね。」
「あ、突然色々話しちゃってすみません。海外生活長かったもので、人との距離感難しいんですよ〜。」
「いえいえ、お気になさらず。では私はこれで。」
あまり得意なタイプではないので早々に抜ける。
もうやることもないし、早速お風呂に入りに行こうか。
この島は一応温泉は有名らしい。
私は支度をするために自室に向かった。
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