第104話 そう、そのまさかです
そして私は犬飼さんに進められるがまま露天風呂へと一緒に向かう。
そこで着替える時にいじめの跡など気になってしまい悪いとは思いつつ犬飼さんの身体をまじまじと見てしまうのだが、そこにはゆで卵のように白くつるつるの、女性である私から見ても羨ましいと思えるほど美しい裸体がそこにあり、ほんの少しではあるもののホッとしてしまう自分がいた。
そして、そんな事を思ってしまった自分がいる事に気付いた私は、私の醜さを見てしまったように感じてしまい、今日幾度目かの自己嫌悪に陥ってしまうのだが、そんな私の心情など犬飼さんが気付くはずも無く、悶え苦しむ私を見て少しだけ不思議そうな顔をしてそのまま露天風呂へと入って行くではないか。
その姿を見て私は急いで服を脱ぎ、露天風呂へと小走りで向かう。
というか気付いたところで私は何を期待しているのか、そう感じてしまう事すら嫌になって来る。
「さて、彩音さん。 何故私があなたと一緒に露天風呂へ入ろうと誘ったか分かりますか?」
「え、えっと……わ、分からないです。 ごめんなさい」
「別に謝る事ではないので頭をあげてください。 そうですね、ではヒントをあげましょう」
犬飼さんはそう言いながら少しだけ上気した顔で何故私を露天風呂へと誘ったのか聞いて来るも、当初予想してた事が違っていた為正直に分からないと答えると、ヒントを与えてくれるというではないか。
「ヒ、ヒントですか……わ、わかりましたっ」
「やる気が見えるのは良い事ですね。 では第一のヒントです」
「は、はいっ!」
私と犬飼さんは露天風呂へ来たのに身体を洗わずお風呂にも入らずにいったい素っ裸で何をしているのだろうか? とか、第一ということは第二もあるのだろうか? など思うものの、とりあえずそんな雑念は追いやり犬飼さんが出すクイズに答える事だけに集中する。
きっとこのクイズは犬飼さんの過去にまつわる事なのかもしれないので真剣だ。
「ここの露天風呂は女湯ですが、隣にある施設は何でしょうか?」
「お……男湯?」
「正解です。 幸先が良いですね。 しかしまだこの現状を理解していないようなので第二のヒントを差しあげましょう。 特別ですよ?」
「あ、ありがとうございますっ」
まったくもって意味が分からないのだが、とりあえずやはり第二のヒントもあるらしくて集中する。
「祐也様は今、どこにいるでしょうか?」
「……………………ま、まさかっ!?」
「そう、そのまさかです」
そして今、この状況がどういう状況であるか理解した私は犬飼さんの肯定する言葉を聞いた瞬間男湯の方へと勢いよく視線を向けて透視できないかとガン見する。
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