第100話 きっと気のせい
その言葉を南川から聞いた瞬間、何故か俺はゾゾゾッと怖気立ってしまう。
その何故か感じてしまう恐怖心がどこからやって来るのか、当初はいきなり子作りしようという狂気じみた発言や、その雰囲気に飲まれてしまったのだろうかとも思ったのだが、そもそも惚れている相手から『子作りしょう』と言われて喜びこそすれ、逆に怖気立ってしまう意味がわからない。
なので俺はその怖気立ってしまった恐怖心が何なのかよくよく考えてみて自分なりにな得のいく答えが見つかった。
それは、もしここで南川が俺の子供を身籠ってしまった場合、南川は高校を間違いなく好奇な目線とあらぬ噂に晒されながら中退しなければならなくなるだろうという事である。
少し考えれば分かる事であるため、俺は直感的にその、南川が身籠ってしまった場合に起きてしまう近い未来を感じ取ってしまったが故に怖気立ってしまったという事である。
愛する人を俺のせいでそんな結末にさせてしまった未来を想像してしまうと、やはり怖気立ってしまうと同時にそんな事をさせてしまった俺自身に腹が立ってくるのでこの考察はまず正しいと言って良いだろう。
「南川、俺は南川との子供は欲しいとは思っているのだが、それでも南川が身籠ってしまったせいで好奇の視線に晒され、あらぬ噂も立てられながら高校を中退するということになってしまったら俺は自分で自分が許せないと思う」
だから俺は俺が思っている本心を変に改変せずストレートにそのまま南川に伝えることにする。
こういう時に変に気遣ったり保身に走ったりして内容を変更すればする程俺が伝えたい事から遠ざかっていく気がするし、そこはかとなく誠実さに欠ける気もする。
「それに関しては大丈夫や。 既にウチから退学届出すつもりやし、高等学校校卒業程度認定試験受けるつもりやからね。 んで、ウチも圭介と同じ大学受験するねん。 もしかしたら一年か二年後輩になってまうかも知れへんけどそうならんように勉強だけはぎょうさんしてきたから。 それに、ウチの両親ならば子育てのバックアップはしてくれるやろうし、ケイくんの両親も息子が未成年の女子高校生を身籠らせた上に相手が高校中退して出産したとなれば罪悪感と罪滅ぼしからバックアップせざるおえんようになるやろしなぁ。 そしてウチが大学行きたいと言っても高校中退してしまった理由が理由なだけあって誰も反対はせーへんやろし」
そう嬉しそうに近い未来を語る南川であるのだが、その計画性の高さからも俺と違ってちゃんと未来を見据えているんだなーと少しだけ凄いなと思ってしまう。
それと同時に俺の脳内の奥でアラームがけたたましく鳴り響いている気がするのだがきっと気のせいだろう。
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祝100話∩^ω^∩がんばった!!
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