第97話 死亡エンドへ修正されたのでは?

 この犬飼さんという女性は自分の『裕也さんの側仕え』というポジションを悪用していつも裕也さんの隣を陣取るばかりか、今回は私の『あーん』を利用して、やりたい放題ではないか。


「い、いいいいい、犬飼さんも何やってるのよっ!? そ、そそそそ、そんな破廉恥なっ!! は、はしたないでしょうがっ!!」


 そしてやはり頬とはいえキスというのは我が妹も納得いかないようで犬飼さんへしどろもどろになりつつも噛みついている。


 いいぞ妹よ、もっとやれ。 と心の中で応援する。


 そして、私はというと犬飼さんに出来て私にできないわけがない、というよりかは側仕えにできて婚約者が『恥ずかしい』という理由で出来ないとは何事か、と自分を奮い立たせて裕也さんの頬へキスをしようとするのだが、私が自分から祐也さんへ頬とはいえどもキスをする姿を想像した瞬間恥ずかしさで先ほどまでのやる気や勇気などが物凄い勢いでしぼんでいってしまう。


 いくら裕也さんへ自分の気持ちを伝えているとはいえ、恥かしいものは恥ずかしい上に、こういった行為は私からではなくて裕也さんから、という乙女な妄想も無いわけではないわけで。


 きょ、今日のところは皆に見えない所で裕也さんの手を握るくらいで許してやろう。 これは負けではない。 戦略的撤退なのだ。


 しかし、この『皆に隠れて』というのは背徳感もすごく、癖になってしまいそうだと私は思うのであった。





 なんだこれは?


 彩音からまさか『あーん』をされるとは思っておらず思わず硬直してしまうと『私のあーんでは食べられないのか』と怒られるわ、なんとか恥ずかしい気持ちを抑えながら『あーん』をやり終えると今度は莉音からつめられ、そのごたごたに乗じて犬飼から頬にキスをされ、それを見た莉音に更につめられるわ、椅子の下で彩音が手を握ってくるではないか。


 そもそも俺は彩音の好感度を上げるような行為は殆どしていなかった為、まさか彩音から『あーん』をされる程、彩音の好感度が上がっているとは想像すらしていなかった。


 そもそも彩音が『あーん』をするのは、ゲームにおいて好感度マックスの指標ではないか。


 いや、ゲーム内でも攻略しやすく初心者向け攻略キャラと言われる程にはチョロインと言われていたキャラクターではあったものの、流石にただ日常を過ごすだけで好感度がマックスになっているとか、最早チョロインとかいうレベルではない気がするのだが。


 てかこれ、俺最終的に恋愛のもつれで刺されるエンドに向かっているような気がするのだが気のせいだろうか? とは思うものの、運命の収束力的な何かがあーだこーだでなんやかんや発動して怨恨で無理なら恋愛沙汰のもつれにより死亡エンドへ修正されたのでは? と思わずにはいられない。

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