第40話 ゴミムシが

「何を呑気な事を言っているのですかっ!? 一度保険の先生に診てもらうべきですっ!」


 今まで気絶しているフリをしていたと言うくらいなので彼らが言うように大丈夫かもしれないのだが、やはり素人の判断で終わらすよりかはちゃんと診てくれる人がいるのならば万が一を考えて診てもらった方が良いに決まっている。


「あ? そんな必要ねぇよ。 それよりも俺たちはお前の婚約者のせいで心が傷ついたんだけど、どう責任とってくれるんだ? あ?」

「そ、そう言われましても……その事については私からも謝罪しますのでっ」


 何でアイツのせいで私が謝罪しないといけないのか。


 そう思っただけで腹が立って仕方がない。


 とりあえずこの件はこれで終わり。 倒れてた人も自己診断ではあるものの大丈夫だと言っているしもう良いだろう。


 これ以上彼らに関わると更に面倒臭そうな事になりそうなのでここで見切りをつけて帰ろうと踵を返すのだが、私の進路を塞ぐように気絶していた二人がいつの間にかいるではないか。


「……どういうつもりですか?」

「どういうつもりだぁ? それはこっちのセリフだよ。 まさか謝っただけで済むとでも思っているんじゃないだろうな?」

「何が言いたいのですか? お金でも払えと言うのですか? 申し訳ないのですが──」

「あ? 何子供みたいなこと言ってんだよ。 どうせ毎日西條とやりまくってんだろ? 今日一日くらいその身体を俺達に貸せっつってんだよ」


 彼の言っている意味を理解するのに数秒かかった。


 それ程までに意味が分からなかった。


 彼らは謝罪として私を抱かせろと言っているのである。


 本当に意味が分からない。


 むしろ西條祐也から助けてもらって感謝の言葉を言うというのがこの場合は普通ではないのか?


 こんな、恩を仇で返すような事を平然とするような奴らだとは思いもしなかった。


 西條祐也もクズだが、これではコイツらは西條祐也以上にクズではないか。


 何でこんな奴らを助けてしまったのか。


 悔しくてたまらない。


「俺、実は前から前の事を犯したいと思っていたんだよな。 最悪無理やり犯してやろうと思っていたら西條祐也に先を越されてしまって、どれほど腹がった事か。 まぁでも、西條祐也のお古なのは腹立たしいがこの際犯せるならお古でも良いか」

「や、やめてくださいっ!! 人を呼びますよっ!!」

「あっそ。 じゃあそう言えなくなるまで殴ってやるよ」

「そうですね。 一生西條祐也様に、そして西條祐也様の所有物に手を出すという思考にすらならないくらいに物理的に恐怖を与えることは私も賛成ですね。 西條祐也様に言われて見張っていればこれですか……ゴミムシが」

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